欧州の危機から日本が考えるべきこと
政治の指導力と国民への説得が必要

 このような欧州の危機から日本が考えるべきことは多い。

 第一に、欧州の難民問題を傍観している訳にはいかず、日本も当然難民受け入れ態勢を強化しなければならない。一部にはこのような難民問題は日本とは無縁であると見る向きもあるが、決してそうではあるまい。

 日本近隣からの難民の発生も考えられなくはない。1994年に第一次北朝鮮核危機が発生し、一触即発の情勢となった時、もし朝鮮半島で戦乱となれば20万人を超える難民の海上から日本への流入が予想されるのではないか、それにどう対処するべきかという議論も行われたと伝えられる。

 第二に、欧州の状況を見て日本は移民難民の受け入れに前向きにはなれないと結論づけてはなるまい。今後、労働人口の減少が本格的になっていくに伴い、外国からの労働力の受け入れ、移民の受け入れも本格的に検討していかなければならない。

 欧州の問題は決して移民・難民の受け入れに消極的になっているということではなく、人道主義や経済的要請の見地から引き続き高いレベルで受け入れを行っていくが、これをどう秩序立てて実現していくか、国民にどう合理的な説明ができるかという問題である。

 結果的には、欧州においては理想と現実のギャップを埋める努力がされ、各国が一定水準まで難民を受け入れていくことや、移民と社会保障経費の問題についてもEU内で検討は進むのだろう。さらに極右・極左のポピュリズム政党が頭角を現していることに対し、既成政党指導者の見識と国民への説得力が問われるのだろう。日本が欧州から学ぶべきなのは、まさにこのような点なのだろう。

 米国ではメキシコ等からの不法移民に強硬な姿勢をとるトランプ氏に、共和党大統領選挙候補者として人気が高まっている。日本でもいわゆる「ヘイトスピーチ」や雑誌などの反韓・反中の記述の多さは排外主義のにおいがする。

 政治指導者が国民に対し、排外主義が国益には沿わないものであることを説得し、見識のある政策を実現していくことは、先進民主主義国共通の課題となっていると言えるのではないだろうか。