自己効力感の高さは、
仕事の遂行能力と高い相関がある
先ほどのAさんの「根拠なき自信」は、じつは学生のときから発揮されていました。大学受験の際も、「絶対に早稲田大学に入ることができる」という根拠なき自信を持っていたのです。
手元にある通知表は2と1ばかり。受験半年前の全国模試での偏差値40という結果であったにもかかわらずです。
「自分なら本気で勉強すれば合格できる!」と自信満々だったのです。
周りからは「絶対に無理だ」と言われていたそうですが、半年間めいっぱい勉強して、見事に合格を果たしたのでした。
このAさんの自信を支えているのが、「自分ならやればできる!」という強い信念です。これは、難しい課題に直面したときに、結果の期待に対して、自分はそれが実行できるという自信である「自己効力感」といわれるものと同じです。
自己効力感の概念は、米スタンフォード大学心理学部のアルバート・バンデュラ教授により1977年に提唱されました。
その後、40年近くにわたり、多くの学者によって研究が続けられています。論文数も多く、最も広範囲に研究された心理学分野の1つです。
バンデュラ博士は、フロイトやユングなどと並ぶ、20世紀における代表的な心理学者として有名です。名誉ある全米心理学会の会長を務めたこともある人です。
自己効力感は「価値ある目標に向かって、自分は業務を遂行することができると自己を信じること」と定義されます。
研究によると、自己効力感の高さは、仕事における遂行能力と高い相関があることがわかっています。
自己効力感のある人は、ストレスの多い状況でも実力を発揮できるのです。特に挑戦的な課題のある状況で、その力は発揮されます。
そのほかにも自己効力感を持つことで、体の健康を維持し、人間関係を良好に保ち、学業やスポーツでも高い成績を収めることができます。
さらには、自己効力感のある人は、レジリエンスがあります。ストレス耐性があり、困難に強く、逆境を乗り越えるタフな精神力を有しているのです。