自己効力感を高める4つの要素とは?

 自信に関する自己啓発書はたくさんありますが、それらの本の中における自信は概念も曖昧で、定義は人によって異なります。

 一方で、自己効力感は定義が明確で、その領域が具体的で、測定可能で、実証研究も豊富です。自己効力感を向上させる手法も確立しています。

自信を高めるには、まずは自分効力感を上げるのが王道なのです。

 では、自信の基盤となる自己効力感は、どうすれば高められるのでしょうか?

 バンデュラ博士は、主に次の4つの要素があると考えています。

(1)「直接的達成経験」:自分が定めた目標を達成し、成功した経験は、次に行う課題が難しいものであっても「自分ならできる」という見通しを強化します。とくに忍耐強さを発揮して逆境を乗り越えた経験は、より強い自己効力感として定着します。

(2)「代理的経験」:自分で直接的に経験をしなくても、他の人が何かを達成した様子を観察することは、「これなら自分にもできる」という信念を生み出します。その相手が自分に近い人であれば、なおさらロールモデルとしての効果は増します。

(3)「言語的説得」:人から自分に能力があることを指摘され、言葉を使って「君ならできる」と繰り返し説得されることは、自己効力感を高める効果があります。

(4)「生理的・情動的喚起」:自己効力感は、前向きな気分で高まり、気持ちが落ち込むと下がることがわかっています。生理的な変化や感情の変化は自分の心理状態の情報源となり、その状態に合わせてムードを高めるなどの適切な工夫ができるのです。

自己効力感を高める4つの要素

 

 これら4つの方法の中でも最も効果的なのは「直接的達成体験」です。

「自分ならやればできる」という自信を持つには、まずは1つでも構わないので「小さな成功」を経験することです。

 大きな目標を掲げるな、と言っているのではありません。

 熱い気持ちで夢や志を持った後に、冷静な頭でステップ・バイ・ステップの段階的な目標設定をすることが大事なのです。

 大目標を細分化して、複数の小目標・中間目標を設定し、小さいけれども確かな成功を計画的に狙うのです。その積み重ねが自己効力感が増し、より大胆なゴールにチャレンジする自信となるのです。

 次回は、根拠なき自信家に共通する3つの心理的資源のうち、その2つ目である「自己肯定感」について説明します。 

久世浩司ポジティブ サイコロジースクール代表
1972年岐阜県大垣市生まれ。慶應義塾大学卒業後、P&Gにて、高級化粧品ブランドのマーケティング責任者としてブランド経営、商品・広告開発、次世代リーダー育成に携わる。在職中にレジリエンスについて学び、応用ポジティブ心理学準修士課程修了。P&Gを退職後、ポジティブ心理学の実務家を育成する社会人向けスクールを設立。レジリエンスを活用した企業人材の育成に従事。認定レジリエンスマスタートレーナー。企業向けの「レジリエンス・トレーニング」は、NHK「クローズアップ現代」や関西テレビ「スーパーニュース」でも取り上げられた。主な著書に、『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!「レジリエンス」の鍛え方』(実業之日本社)、『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(SB Creative)、『リーダーのための「レジリエンス」入門』(PHP研究所)等がある。

※次回は、9月25日(金)に掲載します。