十分な自信を持つことは、すべての人にとって欠かせない能力です。しかし、自分に自信が持てない人が増えています。自信に欠けると、仕事もキャリアも前に進まず、停滞してしまいます。では、どうすれば成功のための自信を手に入れられるのか? その答えは、最近注目を集める「レジリエンス」にあります。本連載では、『なぜ、一流になる人は「根拠なき自信」を持っているのか?』を上梓したレジリエンス研究の第一人者である久世浩司氏が、最短最速で自信をつけるための思考と習慣ついてお伝えします。第3回のテーマは、根拠なき自信家に共通する3つの心理的資源のうち、1つ目の「自己効力感」についてです。

未知のことにチャレンジするためには
「根拠なき自信」が欠かせない

「根拠なき自信」が欠かせないのが、起業家の人たちです。

 起業家精神とは、自ら変化を求め、新たな可能性に果敢に挑戦するチャレンジ精神ともいえるでしょう。何かを創造したいという内発的動機に導かれたマインドです。

 しかし、起業家精神は、起業家(アントレプレナー)だけの専売特許ではありません。企業の中で新しい事業を起こす社内起業家(イントレプレナー)にも、また、新商品や新サービスの開発などに携わるすべての人にとっても必要なものです。

 国内の大手システム会社で新規事業開発を担当するAさんの事例をご紹介します。

 Aさんは、数年前にあるシステム系の新規事業のアイデアを創案しました。そのシステム事業は、業界としてもまったく未知の新しいものでしたが、Aさんは非常にやる意義があると感じ、会社の上層部にかけあって事業推進の承認を得ようとしました。

 ところが、予想外にも社内で猛反対にあってしまったのです。

 所属部署の部長をはじめ、役員たちからも「会社の事業領域に合わない」ということで、ノーと言われてしまいました。

 しかし、周囲からの猛反対にあってもAさんは諦めませんでした。なぜなら、それは世の中で必要とされている事業であり、また、Aさんの部署のメンバーがサポートを申し出てくれたことで、「自分たちならば、必ず成し遂げることができる」という自信があったからです。

 つまり、前例はありませんでしたが、「根拠なき自信」はあったのです。

 唯一、直属の上司だけはAさんの味方になって反対勢力への説得に力を貸してくれました。そして、時間はかかりましたが、部長をはじめ社内投資部門も説得し、最後は事業として進めることが決定しました。

 ゼロからのスタートだったので、形になるまでには3年かかりましたが、いまでは大手企業や自治体からも注目を集め、国から表彰もされるなど成功をおさめつつあります。

「新しいものをゼロから生み出す仕事は、競合がいないため、ほかと比べてどれだけ優れているかという比較対象がありません。だから新しい事業やプロダクトを考えるときは、自分のアイデアには絶対の自信を持たなければできないのです」と、Aさんは教えてくれました。