なぜ、シリコンバレーには根拠なき自信家が多いのか？

史上最年少ビリオネアーを生んだ父親の質問

幾多のビジネスでの逆境を乗り越えることができたのは、食卓での父親の教えにありました。

ブレイクリー家では、夕食の席で「今日はどんな失敗をしたんだい？」と父親から質問されることが習慣となっていました。そして、失敗の話をしないと、父親はとてもがっかりした様子を見せたそうです。

一方で「今日はスポーツで頑張ったけど、全然できなかったよ」と話すと、父親は「いいぞ！」と褒めて、ハイタッチして喜んでくれたのでした。それは、学校で学ぶこととは真逆の教育方針でした。

学校では、教師が「失敗することの問題」を語り、「失敗は悪だ」という考えを説き、失敗に対しての恐怖心を生徒の脳裏に刷り込んでいました。

ところが、学校から帰宅した後の自宅の食卓では、父親が「失敗していないということは、成長できていない証拠だ」と娘を諭し、失敗を堂々と認められるように励まし、勇気の結果としての失敗の行為を賞賛していたのです。

この夕食での定例の儀式により、サラ・ブレイクリーは自分の失敗に対して、他の友達とは完全に異なる捉え方をするようになりました。

本当の失敗とは、悪い結果を恐れて挑戦しないことだと考えるようになったのです。そして、良い失敗をすることは、自分個人の学習と成長にとって必要不可欠であるというプラスの思いを身につけたのでした。

サラ・ブレイクリーは、起業家を目指す若手を前にしたカンファレンスでこう語っています。

「多くの起業家は失敗の恐れのために、前に一歩進むことを躊躇しがちです。だから、私の父からの学びは、皆さんにとって価値ある贈り物になると思います」

失敗体験から学ぶことは、若手の起業家にとっても、その他の社会人にとっても、大きなアドバンテージとなるのです。

久世浩司ポジティブサイコロジースクール代表
1972年岐阜県大垣市生まれ。慶應義塾大学卒業後、Ｐ＆Ｇにて、高級化粧品ブランドのマーケティング責任者としてブランド経営、商品・広告開発、次世代リーダー育成に携わる。在職中にレジリエンスについて学び、応用ポジティブ心理学準修士課程修了。Ｐ＆Ｇを退職後、ポジティブ心理学の実務家を育成する社会人向けスクールを設立。レジリエンスを活用した企業人材の育成に従事。認定レジリエンスマスタートレーナー。企業向けの「レジリエンス・トレーニング」は、ＮＨＫ「クローズアップ現代」や関西テレビ「スーパーニュース」でも取り上げられた。主な著書に、『世界のエリートがＩＱ・学歴よりも重視！「レジリエンス」の鍛え方』（実業之日本社）、『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか？』（ＳＢ Creative）、『リーダーのための「レジリエンス」入門』（ＰＨＰ研究所）等がある。

※次回は、9月30日（水）に掲載します。