世界ビール首位のABインベブが同2位のSABミラーに買収提案を行った。実現すれば、時価総額30兆円超えの超巨大企業が誕生する。規模で劣る日系ビールメーカーにとって、巨人同士の大合併は脅威以外の何物でもない。だがその一方で、意外なチャンスが転がり込んでいる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)
ついに、この時がやって来た──。9月16日、世界最大のビールメーカーであるベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)が世界2位の英SABミラーに買収の打診を行った。
同日、SABミラー側は「金額等の詳細はいまだ提示されていないが、正式な提案があれば検討を始める」と発表。買収金額は11兆円を超えるとみられており、この日のSABミラーの株価は、一時、なんと24%も上昇した。
この発表を受け、ビール業界に激震が走った。買収が実現することになれば、世界シェアの30%を牛耳る、時価総額30兆円超えの超巨大ビールメーカーが誕生。「一強多弱」体制が確立されるからだ(表参照)。
ある外資系ビールメーカー幹部は、この合併を「自動車業界でいえば、トヨタ自動車と独フォルクスワーゲンが一緒になるようなもの」と表現する。つまり、「実現すれば、どの競合メーカーも追随できない」(同幹部)という意味だ。
焦点は、SABミラーが提案を受け入れるかどうかだが、業界内では「SABミラーが拒絶するすべはない」(国内ビールメーカー幹部)とみられている。
実は、かねて業界内ではABインベブがSABミラーを買収する、との観測が流れていた。SABミラーにとって、ABインベブの軍門に下ることは敗北を意味する。