美味しい~! 何これ~!
数分後、肉が運ばれてきた。
「よし、しっかり見といてよ。まずはね、手を網にかざして熱いかどうかをチェックする。うん、これくらい。やってみて」
「あ、なるほど、たしかに熱い」
「で、この真ん中の円よりも少し離れたところ、じつはここが一番熱い。で、ここにあらかじめレモンを絞った塩タンを乗せる」
「はい。で、まだひっくり返さないんですか?」
「いやいや、ここでもう一息待つんだよ。で、これくらい。ここでサッとひっくり返す。それからお皿に乗せる。ここで、少し醤油を垂らしたわさびを載せて食べる」
「あれ? 美味しい……これ、いつも食べてたのと同じ?」
「そう、同じもの。焼き方とわさびが違うだけ」
「え? まるで別物みたい!」
「でしょ? 次に〈ロースわさび〉。これも同じように一番熱いところで焼く。それでひっくり返したら網の上でカイワレをサッと挿む。で、ドレッシングで食べる。どう?」
「うん、これもいつもより美味しい気がする。自分で焼いたのより美味しい」
「でしょ。いつもはるかちゃん、トング持って焼いてるからね」
「だって……目上の人に焼いてもらうの悪いし……でも全然違いますよね、宇佐美さんが焼くと」
「まあね、キャリアが違うよ」
「すごい!」
「ちょっと注文いい? 生2つと、カルビ2人前に牛ホルモン1人前、それにコチュジャンと生のおろしにんにく頂戴」
「すりおろした生にんにくですね」
「そうそう、よろしく」
「なんですか? それ?」
「うん。今からにんにくをすりおろしてもらうの。風味が全然違うから」
「そうなんですか……何だか知らないことばっかり」
「はいお待たせしました。カルビと牛ホルモン、コチュジャンにおろしにんにくです」
「よし、来た来た。ちょっと網替えて。って感じでここで網交換。タレものだからね。その間にタレにコチュジャンとおろしにんにくを入れる。あ、あと小ライス2つ」
「あ、私ご飯は……」
「いいからいいから、今日は俺の言うとおり食べてみなよ」
「あ、はい、そうでしたよね。じゃ、さらに軽めのご飯で」
「さ、ではカルビ焼くよ。これも基本はもう一息待って一度だけひっくり返す。で、にんにくが効いたタレにしっかりつけて~ご飯の上に一旦置いて、すぐに一緒に食べる!」
「あれ?」
「さ、続いてホルモンが焼けたよ。これは基本的に皮の面にしっかり焦げ目をつけて、脂はあんまり焼かない。焼きすぎると脂が回ってくどくなるからね。これもカルビと同じように食べて~」
「??? 美味しい~! 何これ~~!! 全然違う~~~!!!」
「だろ?」
宇佐美は自信満々な表情でドヤ顔をした。
「ってか、こんなに美味しいの!? 知らなかった。もっと食べたい!」
「いいよ、焼いてあげるからしっかり食べなよ」