−−−今秋から『ハゲタカ5 シンドローム』という新連載が週刊ダイヤモンド誌上で始まり、そこではまさに3.11後の電力会社の買収を通して様々な問題が描かれるそうですね。

真山 架空の、東京に電力を送る会社が登場します。ノンフィクションではないからこそ、大胆に真実に斬り込めます。ぜひ期待してください。

 「ハゲタカ」シリーズでも主人公の鷲津政彦以外に、必ず複数の視点登場人物がいます。これは、小説がもつもうひとつの強み−−そしてノンフィクションと大きく違う点でもありますが−−読者が登場人物の世界に入り込みやすいところを生かすのに有効なのです。ノンフィクションで前面に出して描かれるのは“事実”であり、現実に起こったことを精緻に調べ、その背景にあったことを浮かび上がらせます。一方、小説は事実をベースにしていても作為的に登場人物をより興味深く描くことができますから、彼らが悩んだり追い詰められたりする“視点”に読者は一層入り込めて共感しやすいのですね。そこが小説の持つ強み、魅力だし、だからこそ私は小説家になりたいと思いました。

−−−でも、私たちの日常生活を考えても、ひとつのテーマについて複数の視点をもつというのは難しいことですよね。

真山 常に意識していれば、ある程度は訓練できると思うんですけど、確かになかなか難しい。小説を勉強のために読んで欲しいわけではありませんが、エンタテインメントのひとつとして楽しみながら、そういう訓練にもなるということも覚えておいて頂けると嬉しいです。