どう工夫しても一冬10万円以下にはならない
冬の北海道の暖房事情

 そもそも全く想像できないのは、「冬の北海道で暮らす」ということだ。九州育ち・東京在住の私は、自分の生活環境としては、重ね着・電気コタツ・電気毛布に加え、ときどき灯油ファンヒーターやエアコンも使用すれば凌げる程度の冬しか経験したことがない。冬季加算の地域区分でいえば、最も温暖なVI区で暮らし続けている。最も冬の厳しいI区にあたる北海道の冬は、最低気温や降雪・吹雪に関するニュースで一応の理解はできるけれども、「そこに暮らす」ということが全く想像できない。

佐藤宏和(さとう・ひろかず)
北海道健康と生活を守る会連合会(道生連)副会長。札幌市白石区で支援活動をしていた時期の1987年、母親餓死事件が発生し、「住民の生活と権利を守る福祉行政が必要」と痛感した。現在は、生活保護基準切り下げ中止を求める審査請求と行政訴訟(新・人間裁判)に全力投球中。
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 まず、暖房には何を利用するのだろうか? 北海道の暮らしの「基本のキ」を尋ねる私に、数多くの生活困窮者たちを支援してきた北海道生活と健康を守る会連合会(道生連)の副会長・佐藤宏和さんは、苦笑しながら、

「主に灯油です。どこの家にもだいたい、外に400リットルまたは200リットルの灯油タンクがあります。最近のアパートでは、外気に直接排気するFF式石油ファンヒーターが作り付けられていることが多いです。アパートでは、ベランダに90リットルタンクが最初から設備されている場合もあります。業者が来てホースで給油します。常に100リットルくらいは置いておかないと安心できない感じですね」

 と教えてくれた。灯油は18リットル単位で購入し、残りが10リットルを切ると心もとなくなる東京の私の生活実感とは、まったく異なるようだ。

 さらに、同じく道生連副会長の細川久美子さんが、

細川久美子(ほそかわ・くみこ)
北海道健康と生活を守る会連合会(道生連)副会長。長く生活相談活動に携わり、全道からの相談に対応している。雑誌誌「笑顔でくらしたい」(http://hokkaido-syahokyo.com/category/smile/)に「久美子の相談室」を好評連載中。NPO法人の役員も務め、精神障害者の支援に日夜奮闘中。
Photo by Y.M.

「よく『北海道の人は、あんなに室内を暖かくするから、暖房費がかさむんだ』と言われることがあります。摂氏26度とか、低くても24度とかに設定している人が多いんですよね。でも、外が寒いので、家の中に入っても、すぐに身体が温まらないんです。20度だと『いられない』なんです。外の冷気が肌に染み付いたままの感じで」

 と補足する。私が東京の住まい兼仕事場の室温を16度以下にしておくことができるのは、外の環境がそれほど苛酷ではないからなのだろう。

 それしても、劣悪な住環境の中で個別に暖房を行うから、かえって割高になるということはないだろうか?

「確かに、生活保護の方のお住まいは、古いところが多いです。築20年とか30年とか、一般の人が借りないような物件を、お願いして生活保護の家賃基準内で貸していただく感じです。そういうところだと、暖房がないと室温がマイナスになります。でも、集合住宅の集中暖房でも、安くはないです。公営住宅で地域集中暖房のところでも、一冬の暖房費は1戸あたりで10万円を超えます」(細川さん)