社保審・生活保護基準部会は、12月にも議論の取りまとめを行い、結果を2015年度予算編成に反映すると見られている。現在は、住宅扶助と生活保護費のうち冬の暖房費として支給されている「冬季加算」をめぐる議論が佳境だ。冬季加算については「現状でも3000円高すぎる」とする報道もあるが、実際にはどのような議論が行われているのだろうか?
これで「取りまとめ」?
まだ議論の入り口にも立っていないのに?
Photo by Yoshiko Miwa
2014年11月18日、厚労省において、社会保障審議会・第二十回生活保護基準部会が開催された。2014年10月21日に開催された第十九回(当連載政策ウォッチ編・第82回参照)から、約1ヵ月後である。
取材に来ていたマスメディアは、筆者が気づいた限りではNHKのみであった。そのNHKは、今回の基準部会の様子を下記のように報じている。
生活保護費のうち冬の暖房費として支給されている「冬季加算」について、厚生労働省は所得の低い世帯の暖房費より1か月当たりの平均で3000円余り上回っているという試算をまとめました。厚生労働省は、今回の試算を基に冬季加算の水準を見直すかどうか年内に結論を出すことにしています。
(略)
冬季加算が所得の低い世帯の暖房費を上回ったことについて、厚生労働省は、生活保護の受給世帯は木造住宅に住んでいたり、病気などで働くことができず家にいる時間が長かったりして、暖房費がより多くかかるケースもあるとしています。
(略)
この報道に接した人の多くは、
「生活保護世帯の冬季加算は、1ヵ月あたり3000円も『もらいすぎ』だったのか、やっぱり」
という納得をしてしまったのではないだろうか? よく読むと、「3000円余り上回っている」という厚労省のまとめは未だ「試算」の段階である。また、冬季加算引き下げについても、「冬季加算の水準を見直すかどうか年内に結論を出すことにしています」とある。「見直すかどうか」に関する結論も、年内に「出る」と決まったわけではなさそうだ。
Photo by Y.M.
一連の議論を傍聴し続けている筆者は、
「今の段階で、どういう結論が出せるというのだろう?」
と思う。生活保護利用者たちの「住」の実態に関する調査は、住宅扶助の見直しに関する検討に伴って、本年8月に初めて行われ、生活保護基準部会委員の一部をメンバーとする作業班によって集計が行われつつある。現在の生活保護基準部会での検討は、その結果を踏まえてのものだ。現在の段階では、住宅扶助の上限額に関する何らかの提言を行うどころか、「上げるべきか」「下げるべきか」という議論が可能になる段階にさえ立っていないのではないか? 生活保護の「住」、すなわち「健康で文化的な最低限度の住」の具体的内容についてのコンセンサスが、たとえば、
「設備も含め、閣議決定された国交省の最低居住面積水準に従う」
と明確にされているわけではないからだ。それが明確にならない限り、「いくら必要なのか」「現状はいくら足りないのか(多すぎるのか)」を明らかにすることはできないはずだ。