繰り返すことで記憶を体になじませる

出口汪(でぐち・ひろし)1955年東京生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程修了。広島女学院大学客員教授、論理文章能力検定理事、東進衛星予備校講師、出版社「水王舎」代表取締役。現代文講師として、予備校の大教室が満員となり、受験参考書がベストセラーになるほど圧倒的な支持を得ている。また「論理力」を養成する画期的なプログラム「論理エンジン」を開発、多くの学校に採用されている。著書に『出口の好きになる現代文』『出口のシステム現代文』『出口先生の頭がよくなる漢字』シリーズ『子どもの頭がグンと良くなる!国語の力』『芥川・太宰に学ぶ心をつかむ文章講座』『大人のための本当に役立つ小学生漢字』(以上、水王舎)、『出口汪の新日本語トレーニング』『出口汪の新日本語トレーニング』『出口汪の日本語論理トレーニング』シリーズ(小学館)、『東大現代文で思考力を鍛える』(大和書房)、『出口汪の「日本の名作」が面白いほどわかる』(講談社)、『マンガでやさしくわかる論理思考』(日本能率協会 マネジメントセンター)、『やりなおし高校国語・教科書で論理力・読解力を鍛える』(筑摩書房)など。小説に『水月』(講談社)がある。
・公式ブログ
「一日生きることは、一日進歩することでありたい」
・オフィシャルサイト
http://deguchi-hiroshi.com/
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 出口 では、「忘れてはいけない」というシグナルをどうやって脳に送るのかというと、忘れないうちに反復すること。

 たとえば、中学一年で記憶したとして、それを6年後の大学受験のときまで維持するのは普通はできないでしょう。ということは、その間に繰り返し記憶して、体に覚えさせるわけです。

佐藤 私も、まさに繰り返すことで覚えていました。本にも書きましたが、「夜寝る前に覚えたことを朝もう一度思い出す」という方法が、シンプルだけれどすごく効果がありました。これも、寝ている間に脳が記憶を定着させてくれるという脳科学に基づいたやり方です。

出口 そうやって繰り返すことで、記憶は自分のものになっていく。記憶にもレベルがあって、これは「セレゴ・ジャパン」という会社のサイトの記憶システムなんですが、レベルを4段階に分けて、その最後の段階を「オートマティック」と呼んでいるんです。訳せば、「自動的」ということになるんだけど、つまり、思い出そうとしなくても自然に出てくるくらい習熟しているレベルということ。さっき話した、繰り返し記憶して体に覚えさせるというのは、こういうことなんです。

佐藤 私も同じことを「思考力ゼロ術」と呼んで、究極のアウトプットと定義づけています。

出口 そのいい例が「言葉」です。普段毎日使っているから、何も考えなくても出てきますよね。これが英会話になると、そういう環境が日本ではつくれないから、なかなかオートマティックまで持っていくことができない。だから難しいんですよ。

佐藤 そう思います。逆に、何も考えずに出てくるレベルまでいけば、使える知識になるということですよね。

出口 そうですね。このような記憶術は、受験勉強だけでなく、社会人になってからも重要だと思います。さらにいうと、すべての記憶が習熟レベルになる必要はなくて、本当に覚えるべきことだけ覚えるようにするのがポイントなんですよね。