ただやみくもに知識を詰め込むことが、勉強ではない。正しい勉強法を知っているのと知らないとでは、勉強の成果は一目瞭然。『出口汪の「最強!」の記憶術』がロングセラー。”受験の神様”ともいわれている出口汪さんを迎え、一生使える勉強法について語ります。 (取材・文/狩野南 撮影/熊谷章)

足し算ばかりで、引き算を計算にいれいてないのはなぜ?

忘れることを前提に記憶する究極の勉強法
佐藤大和(さとう・やまと)レイ法律事務所代表弁護士(東京弁護士会所属) 1983年生まれ。宮城県石巻市出身。高卒貧乏一家の長男として生まれる。小5まで九九を覚えられず、高校での模試はダントツのビリ。偏差値30の落ちこぼれヤンキーが、二浪して三重大学人文学部に入学。大学生になってから勉強に目覚め、数ヵ月という短期間の独学で、当時難関だった立命館法科大学院既修試験(2年コース)に合格。2009年大学院卒業後、同年の司法試験に1回目で合格(民事系科目は上位5%以内で合格)。2011年、弁護士となり、大手法律事務所を経て、2014年4月、レイ法律事務所を設立。TBS「あさチャン!」のコメンテーター、フジテレビ「リーガルハイ」「ゴーストライター」など一部監修・出演のほか、地方局(仙台、静岡、長野、福島)のレギュラー出演など、数多くのメディアに登場し、マルチ弁護士として活躍中。

佐藤 勉強法もそうですけど、「暗記術」や「記憶術」に関しても誤解している人って多いと思いませんか?

出口 そう。よく「記憶力が悪い」と言う人がいるけれど、そもそも、「忘れる」ということ自体が、脳科学的には当たり前のこと。それを知らないで、とにかく覚えようとしてしまうんだよね。

 たとえば、「英単語を1日10個覚えたら、300日で3000個覚えられる」というのを鵜呑みにして、「1日10個だったら覚えられそう!」と、やり始めてしまう。

佐藤 単純計算ならそうですけど、その通りにはいかないですから(笑)。

出口 忘れるということを前提にしていない。人間は本来忘れる生き物なんだから、そこを知らないとどんなに頑張っても記憶は定着しないんです。

佐藤 「覚えているはず」と思ってやっていると、「何でこんなに覚えられないんだろう?」と落ち込んで、勉強が嫌いになってしまうんですよね。

出口 そうならないために、まず忘れるメカニズムを理解しなくては。このメカニズムというのが、私の本にも佐藤先生の本にも出てくる有名な「エビングハウスの忘却曲線」ですね。人は覚えたことを20分後には42%、1時間後には56%、1日後には74%忘れてしまう。

佐藤 何もしなければ、時間が経つほど、どんどん忘れていってしまうということですよね。

出口 そこで、「忘れてはいけない」というシグナルを脳に送ってあげる。そういう脳科学に基づいた記憶術が必要なんです。

佐藤 そこさえわかってしまえば、あとは実践していけばいい。そうしたら、覚えることもどんどん楽しくなってくると思うんです。