ただやみくもに知識を詰め込むことが、勉強ではない。正しい勉強法を知っているのと知らないとでは、勉強の成果は一目瞭然。『出口汪の「最強!」の記憶術』がロングセラー。”受験の神様”ともいわれている出口汪さんを迎え、一生使える勉強法について語ります。 (取材・文/狩野南 撮影/熊谷章)
足し算ばかりで、引き算を計算にいれいてないのはなぜ?
佐藤 勉強法もそうですけど、「暗記術」や「記憶術」に関しても誤解している人って多いと思いませんか?
出口 そう。よく「記憶力が悪い」と言う人がいるけれど、そもそも、「忘れる」ということ自体が、脳科学的には当たり前のこと。それを知らないで、とにかく覚えようとしてしまうんだよね。
たとえば、「英単語を1日10個覚えたら、300日で3000個覚えられる」というのを鵜呑みにして、「1日10個だったら覚えられそう!」と、やり始めてしまう。
佐藤 単純計算ならそうですけど、その通りにはいかないですから(笑)。
出口 忘れるということを前提にしていない。人間は本来忘れる生き物なんだから、そこを知らないとどんなに頑張っても記憶は定着しないんです。
佐藤 「覚えているはず」と思ってやっていると、「何でこんなに覚えられないんだろう?」と落ち込んで、勉強が嫌いになってしまうんですよね。
出口 そうならないために、まず忘れるメカニズムを理解しなくては。このメカニズムというのが、私の本にも佐藤先生の本にも出てくる有名な「エビングハウスの忘却曲線」ですね。人は覚えたことを20分後には42%、1時間後には56%、1日後には74%忘れてしまう。
佐藤 何もしなければ、時間が経つほど、どんどん忘れていってしまうということですよね。
出口 そこで、「忘れてはいけない」というシグナルを脳に送ってあげる。そういう脳科学に基づいた記憶術が必要なんです。
佐藤 そこさえわかってしまえば、あとは実践していけばいい。そうしたら、覚えることもどんどん楽しくなってくると思うんです。