デフレで所得代替率は上昇する
現在の制度を継続すれば年金財政が破たんすることを、過去3回の連載(第67回、第68回、第69回)で述べてきた。これが生じる基本的な原因は、賃金が伸びないために、保険料収入が財政検証の予測値よりは減少してしまうことだ。
もちろん、賃金が伸びなければ、新規裁定される年金額は低くなる。しかし、新規裁定年金は、全体の給付のなかでは一部分を占めるにすぎない。したがって、給付額は、財政検証で予測する値からあまり大きくは減少しない。この計算では、近似として、財政検証の値から不変であるとしている。
以上で述べたことを逆の面から見れば、「現役世代の給与に対して年金給付が高すぎる」とも言える。とくに、既裁定分についてそのことが言える。
では、賃金が下落する場合に財政検証どおりの給付を続ければ、所得代替率はどのような水準になるだろうか?
まず、財政検証が想定する代替率は、【図表1】のA欄に示すとおりだ。