Q.横浜市のマンションのくい打ち工事施工不良で、工事を担当した旭化成建材によるデータの流用問題が全国レベルに広がりをみせています。親会社の旭化成も含め、企業は不祥事が発覚した場合の危機対応として、メディアにどのように接するべきだと思いますか。

すべての情報を誠実に開示しないと
再起のチャンスすら失う

A.当然、最高経営責任者たる社長が社内調査を行ったうえで、メディアに対して最新の情報を自分の言葉で伝えるべきと思います。

 会見では、記者からの質問には時間制限を設けず答えるべきでしょう。また、今日ではインターネットによる生放送という発信手段もあるので、テレビの放送時間枠に収まるように配慮した時間制限を設ける必要はありません。

 かつて私もライブドア事件のときは、強制捜査後の記者会見は、質問が続く限り、社長である私自身がメディアに対して対応しました。

 ただ、大事件になり連日の大騒ぎとなると、すべてにのマスコミに100%対応するというのは、現実には難しい面もあります。しかし、刑事責任を問われてもおかしくない事件ですから、法務部門や顧問弁護士とも十分相談のうえ、言葉は選んで話をしないといけないでしょう。

 今回の旭化成建材の場合、当初は「現場のくい打ち担当者の個人な問題」といった発表を行っていましたし、その後の会見でも社長が姿を現さないなど、不誠実な対応と見られても仕方がない面が多々ありました。

 今後、旭化成建材の経営陣は、親会社旭化成の株主などから損害の賠償などを訴えられる可能性も少なくないと思います。

Q.ユニークな経営手法で知られる松村厚久・ダイヤモンドダイニング社長が、自らが若年性パーキンソン病であることを告白しました。上場企業の経営者が自らの健康状態についての告白を、どう受け止めればよいのでしょうか。

投資家にとって経営者の健康状態は
どうしても知っておきたい重要な情報のひとつ

A.ダイヤモンドダイニングが上場企業である以上、投資家にとっては、社長が難病を患っていること自体がリスクファクターになりますから、それは当然開示する必要があるでしょう。

 経営者の病気は、経営に大きな影響をもたらす。したがって、その告白を可及的速やかに行うことは当然、やむを得ないと思います。

 逆に、病気であることを公表しなかった場合、ダイヤモンドダイニングの株式の売買において、インサイダー取引を可能せしめるリスク要因を、松村社長自身が作り出してしまうことにもなります。

 また、実際の経営の現場においても、飲食店の経営者は末端の従業員の統率のために、どうしてもカリスマ的にならざるをえないケースが多い。メディアに露出の多いオーナシェフなどが多いのはそのためです。

 したがって、経営者の疾病によるカリスマ性の低下の経営面への影響は、他の業種より大きいはずです。

 実は、私は松村社長の病気を以前より知っていました。これとは別に、友人がダイヤモンドダイニングと仕事上のお付き合いをしていた関係もあって、私自身はダイヤモンドダイニングの株式の売買は一切行っておりません。

 しかし、彼の病気を知っていながら、その告白の前に株式の売買を行った関係者がいれば、その行為はインサイダー取引にあたる可能性があるので注意が必要です。

 あと、もちろん、これからもお店には変わらずに足を運ぶつもりです。