「貧乏くじを引かされるのは、米国の納税者」──。来年の米大統領選挙の民主党最有力候補、ヒラリー・クリントン氏の批判の矛先は同国の製薬最大手ファイザーだ。

 11月23日、ファイザーは総額1600億ドル(約19兆7000億円)という中規模国家の予算に匹敵する巨額M&A(合併・買収)を発表した。これによって医療用医薬品で首位を奪還、世界最大の製薬会社が誕生する。

 この買収劇に米国内から巻き起こったのは“ノー”の大合唱だ。ヒラリー氏のみならず、ルー財務長官や大統領選に共和党から名乗りを上げたドナルド・トランプ氏に至るまで続々と懸念を表明した。

 ファイザーは2009年に680億ドルを投じて米ワイスを買収するなど、これまでも巨額のM&Aを繰り返してきた。高脂血症治療薬「リピトール」の特許切れなどで売り上げが急減する中、今回もしわ取り薬「ボトックス」などのヒット商品を持つアイルランド・アラガンの買収で、商品ラインアップの底上げを図る。

 だが、今回の買収で批判が殺到したのは、ファイザーの真の狙いが、そんな本業のシナジー効果よりも、“税金逃れ”にあると見透かされているからだ。