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大ヒットドラマ「梨泰院クラス」などを手掛けた放送局「JTBC」や主要日刊紙「中央日報」を束ねる韓国の大手メディアコングロマリット「中央グループ」の5社が6月15日までに企業再生手続きに入った。大人気コンテンツを制作し、歴史もあるメディアの崩落に韓国国内では大きな衝撃が走っている。連載『メディア興亡』の本稿では、豊富なコンテンツと信頼のあった巨大メディア、中央グループがいかにしてドミノ倒しになったかを明らかにし、「他山の石」として考証していく。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
世紀のスクープ放った名門が困窮
引き金は放送局の債務不履行
「会社はこれまで経営の安定のために最善を尽くしてまいりましたが、対外経済環境の悪化や信用格付けの低下による資金繰りの悪化など、さまざまな理由から本日のやむを得ない選択をせざるを得なくなりました」
6月15日、ソウル市麻浦(マポ)区の中央日報ビル大講堂であった記者会見で、中央グループの実質的な経営者である洪正道(ホン・ジョンド)副会長が沈痛な面持ちで説明した。会見では洪副会長が「株主をはじめとする全ての利害関係者の皆さまに深くお詫び申し上げます」と謝罪する場面もあった。
中央グループは1965年に創刊した日刊紙「中央日報」を主軸とし、持ち株会社の「中央ホールディングス」や放送、映画館運営、不動産などの関連会社で構成する「韓国最大の総合コンテンツ企業」(同グループ事業報告書)だった。なぜグループはきしみ始めたのか。韓国メディアの各報道から、崩壊のシナリオをたどっていこう。
ほころびが表面化したのは、記者会見の3日前、12日のこと。グループ内の放送局JTBCが、総額206億ウォン(約20億円)の短期借入金を期限内に返済できず、債務不履行(デフォルト)を宣言した。
JTBCは2011年に開局。世界的大ヒットとなったドラマ「梨泰院(イテウォン)クラス」や「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」を放映していたことで知られる。また、16年には当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領の知人女性、崔順実(チェ・スンシル)氏の国政介入をスクープし、朴大統領の弾劾の大きなきっかけをつくった報道番組「JTBCニュースルーム」が韓国では高い知名度を誇る。こうした実績から公共放送KBSなどと並んで「信頼できるメディア」という印象を挙げる韓国市民も少なくない。
JTBCのデフォルト宣言直後から、これに呼応する形で系列会社の信用格付けも次々と引き下げられた。14日には中央ホールディングスや不動産賃貸事業を手掛ける「中央P&I」、コンテンツ制作会社の「コンテンツリー中央」、シネマコンプレックス(複合映画館)運営の「メガボックス中央」の計4社が裁判所に企業再生手続きを申請。JTBCも15日に同手続きを申請した。
洪副会長は15日付の従業員向け声明で「再生手続きは会社を整理する手続きではありません。裁判所の監督の下で債務を調整し営業を継続しながら会社を正常化する制度であり、既存の経営陣が管理人として経営を継続することが原則です」と強調した上で「従業員の皆さまの底力と経営陣の責任ある努力が一つにまとまれば、私たちは必ず今回の危機を賢明に乗り越えることができます。私も最高経営陣として重い責任感を持ち、中央グループの正常化と再飛躍のために全力を尽くしてまいります」と呼び掛けた。
しかし崩壊の連鎖は止まらない。19日には、中央日報(20年時点の発行部数71万1000部)がメインバンクの韓国・ハナ銀行に同行主導の経営再建(ワークアウト)を申請した。今後、経営改善策が練られていくとみられる。中央日報経営支援室は声明文を公表し「中央日報は、法定管理(企業再生手続き)を申請したほかの中央グループの系列会社と経営的に分離された独立法人です。本業は揺るぎません」と強調し、経営破綻や新聞発行の休止という事態ではないことに理解を求めている。
韓国の三大日刊紙は同社を含めいずれも保守系の「朝鮮日報」(同106万部)、「東亜日報」(同84万2000部)があり、その頭文字を取って「朝中東(チョチュンドン)」と呼ぶ。日本で言えば「朝日新聞」「毎日新聞」「読売新聞」(いわゆる『朝毎読』)の一角に位置する大手紙だ。87年には当時夕刊紙だった中央日報が警察による大学生の拷問致死事件をスクープ。韓国が軍事独裁政権から脱却し民主化に至る火種を世に放った。それだけに、深刻な経営不振が明らかになると韓国国民は大きな衝撃を受けた。
歴史と伝統あるメディアだった中央グループは、豊富なコンテンツと報道への信頼があったにもかかわらず、なぜ、崖っぷちまで追い込まれてしまったのか。関係者の証言によると、日本のメディアも陥りかねない経営判断の重大な誤りがあった。次ページでは韓国のメディア関係者の証言などから、JTBCがデフォルトに至った理由や、巨大グループ崩壊の決定打となった「失敗の本質」を暴く。







