パトロンが破産して夜逃げ。
彼の奥さんが子供を連れて、転がり込む

山田 着物コスプレするほどラブラブだったモネ夫妻なんですが、この愛妻のカミーユが、若くして亡くなってしまうんですよ。

こやま あら。よく死んじゃいますねぇ、奥さん。

山田 しかも彼女が亡くなる1年前、アルジャントゥイユからヴェトゥイユという町に引っ越した頃に、幸せだったモネ家の環境が急変する事件が起きるんです。『印象・日の出』を買ってくれて、モネと印象派の大パトロンになってくれていたエルネスト・オシュデというパリのデパート王がいたんですが……。

こやま 大金持ちですね。 

『死の床のカミーユ』1879年、オルセー美術館、パリ

山田 その大金持ちが破産して、ベルギーに夜逃げしちゃうんですよ。それで彼の奥さんが6人の子どもを連れて、なぜかモネの家に転がり込んで来ちゃう。

こやま 妻子を置いて夜逃げですか?それはモネも大変ですね。

山田 たいして広くない家ですよ。しかもその年にモネの奥さんのカミーユは次男のミシェルを産んで、産後の肥立ちが悪くて寝込んじゃう。そして翌年に亡くなってしまうという。これはモネが愛妻の死の瞬間を悲しみをこらえて描いた作品です。 

『ヴェトゥイユの庭』1880年、ナショナル・ギャラリー・オブアート、ワシントンD.C.


山田 
生まれたばかりの次男を残して愛妻に先立たれ、普通なら途方に暮れるところだけど、幸か不幸かオシュデの妻アリスが転がり込んでいた。彼女が自分の6人の子とモネの2人の息子の面倒も見ることになり、都合10人の大家族となってジヴェルニーに引っ越すわけです。これはその直前にヴェトゥイユで描いた作品です。