奥さんにコスプレさせて描くようになったらラブラブ病も重症ですよ

『手仕事をしているカミーユ』1875年、バーンス・コレクション、フィラデルフィア『馬の三輪車に乗るジャン・モネ』1872年、メトロポリタン美術館、ニューヨーク

山田 風景画家のイメージが強いモネですが、アルジャントゥイユ時代には家族を描いた作品がたくさんあるんですよ。長男を描いたこの作品からも、貧しいながら幸せそうな感じが伝わってきますよね。

こやま 奥さんのこと大好きだったんですね。

山田 間違いないですね。その証拠がこれです。有名な『ラ・ジャポネーズ』という作品で、モデルはもちろんカミーユです。レンブラントの時代から、奥さんにコスプレさせて描くようになったらラブラブ病も重症ですよ。

こやま これは着物ですか?

山田 打ち掛けですね。マネ先輩を見習って、当時の日本ブームを取り入れた。

こやま うちわもありますもんね。「これでもか!」っていうぐらいの日本ですね。ちょっと間違ってる気もするけど。

山田 以前、京都服飾文化財団の深井晃子さんに伺った話では、モネは着物の裾を曲線裁断のように描いてしまっているそうです。

『ラ・ジャポネーズ』1876年、ボストン美術館

こやま じゃあこれ想像で描いたんですか?

山田 いや、実際に着物を着せて描いたんだけど、直線裁断の裾が円を描くことが西洋人のモネには感覚的に理解できなかったのではないかと。日本の直線裁断が西洋の服飾にいかに衝撃を与えたかがこの作品からも見て取れると、深井さんはおっしゃってました。

こやま 見えてるものとは違うふうに描いたってことですね。