「ヘンタイ美術館」とは、美術評論家・山田五郎さんを館長、ズブの西洋美術シロウト・コピーライターこやま淳子さんを学芸員見習いに見立てた架空の美術館。美術に興味はあるけれどどこから入っていいのかわからない、という方々に向けた、西洋美術の超入門・連載です。こちらの連載では、書籍『ヘンタイ美術館』から内容をピックアップしてお届けします。第2回は、モネの心の傷について、です。

飽くなき連作の背景にはモネの心の傷が

山田 さて、ここからが今回の本題です。同じ睡蓮を飽きずに200枚以上も描き続けたモネの執念って、ヘンタイ入ってると思いません?

こやま まあ、いっぱい描きすぎですよね。心が健康で正常な人は、こんなことできない気がします。

山田 ですよね?そこでオレの仮説なんですけど、飽くなき連作の背景にはモネの心の傷があったのかもしれない。

こやま またそういうのですか!?

『散歩、日傘をさす女』1875年、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート、ワシントンD.C.

山田 今回は「男の心の傷」が裏テーマですから。実はモネは39歳のときに、最初の奥さんと死別してるんですよ。この有名な作品に描かれた、カミーユという女性なんですが。一緒に描かれている子どもは、モネの長男ジャンですね。

 モネ一家は1871年から78年までパリ近郊のアルジャントゥイユって町で暮らしているんですが、オレは個人的にはこの時期の作品がいちばん好きなんですよ。お金はないけど仲間と新しい運動を立ち上げて子どもも生まれ、公私ともに気力に満ちた30代。モネにとって、いちばん楽しく幸福な時代だったんじゃないでしょうか。こちらも奥さんのカミーユを描いた作品ですが、幸せそうでしょ?

『アルジャントゥイユのひなげし』1873年、オルセー美術館、パリ


こやま
 とてもいい絵ですね。