下請け・リフォームで
一定の地位を築いていた中小工務店

 地方都市の国道を車で走っていると、『○○工務店』 という看板をよく目にする。お客様が来て商談ができるきれいなスペースを確保している店もあれば、軽トラが店の前を占拠し、店はシャッターが下りているお店もある。車窓を眺めていると、そんな光景が見える。

 かつては、大都市でも地方都市でも多く見られたこうした“町の工務店”の数がどんどん減少している。その原因は大きく2つに分かれる。仕事が減少し(受注できない)、あるいは利益がとれないということ。そしてもうひとつは「跡継ぎ」がいない、ということだ。

 20年ほど前までは、どんな町にも工務店なるものは存在し、一定の地位を築いていた。それが今では大変厳しい状況にさらされている。

 工務店というと、色々な工事に携わっているイメージがあるが、主に住宅に関する工事を請け負う企業をここでは指すことにする。もちろん社名に工務店という名前が入っていることもあれば、そうでない場合もある。

 こうした企業の主な仕事は、新築住宅を直接または下請けとして建築することだった。直接受注に関しては、あまり積極的な販促活動を行わず、知人・紹介などのルートで舞い込んだ案件を受注していることが多い。であるから、1年間にそれほど多くの数をこなしているわけではない。もちろん、こうした工務店の中には大きくなり、建売会社として発展、上場した企業もある。

 一方、それほど規模が大きくはない多くの工務店は、建売企業・ハウスメーカーなどの下請け企業として存在し続けてきた。そのため、彼らが積極的に営業する先はエンドユーザーではなく元請企業の担当者であった。

 しかし、以前この連載の第1回でも書いたように、新築着工戸数は激減している。1970年ごろからどんな不況期においても100万戸を切ることがなかったこの数字は、2009年80万戸を下回った。建売企業の中には資金繰りが厳しく、事実上廃業した企業もあり、また多くのハウスメーカーは事業のポートフォリオの再編を図っている。具体的には圧倒的中心に据えていた新築事業からストック系ビジネスへ転換させている。また、安さを売りにしたハウスメーカーの台頭もあって各ハウスメーカーも安価商品を投入した。

 こうした影響を工務店はモロに受け、仕事が激減し、そしてまた安価な仕事つまり利益が少ない仕事が増えたのだ。これでは、たとえ小人数で経営している日々のキャッシュフローが小額である企業でさえも厳しい状況に陥った。