「役割期待」を伝達・調整するカギはコミュニケーション

 役割期待に「ずれ」はなくても、それらを伝えるコミュニケーションが乏しいためにストレスにつながることも少なくありません。

 例えば、曖昧な上司は、部下への役割期待を適切に伝えていないと言えます。きちんと伝えれば、それは部下にとってやりがいのある仕事となるかもしれません。

 しかし、伝えていないために、顔色を読むという余計なエネルギーを部下に使わせてしまいますし、部下は期待を読み違えて不適切な仕事をしてしまうかもしれません。部下は超能力者ではないのですから、言葉で伝えずに適切な仕事をさせようとしても無理です。

 つまり、「機能するリーダー」とは、相手に期待する役割を適切に伝えられる人、ということになるでしょう。

「○日までに、×をやってください。その際、最も注意してほしいのは△です。不明なところは、いつでも質問してください」というふうな伝え方をすることで、ずれを防ぐことができます。

 このときに、「×」という結果を出すために「最も注意してほしいのは△」ときちんと伝えておくことが大事です。そうしないと、とんでもない方向に進んでしまいかねません。

 また、こちらが伝える「役割期待」が相手にはとても無理だったり、やりたくない仕事だったりしたときは、十分なコミュニケーションをとって、お互いに役割期待の交渉に入ればよいのです。

 例えば、「今そういう指示を受けて、どう思いましたか?」「何とかできそうですか?」などとフォローしていけばいいでしょう。

 そもそも、「リーダー」と言うとどうしても「人を引っ張っていく役」と思われがちかもしれませんが、「管理職」という言葉にすると、部下の働き方を管理する人、つまり、期待する役割を調整して部下に果たしてもらう人、という意味にとらえやすくなります。

「よい管理職でいるべき」という「べき」で縛ってしまうとストレスフルですが、「相手に期待する役割を伝え、それがうまくできるように一緒に工夫していく立場」と考えれば、「べき」とは無縁でいられます。

 本当に、人はそれぞれですので、一人一人にとって働きやすい条件は違うのです。役割期待の交渉は、その「働きやすい条件」を知ることにつながります

「今そういう指示を受けて、どう思いましたか?」「何とかできそうですか?」という質問があるのとないのとでは、まったく結果が違ってくるでしょう。

 場合によっては、「×をやってほしい」ということすら、現場を知る部下から見れば非効率で、「◇の方が話が早いような気がするのですが」という意見が出てくるかもしれません。

 部下からこう指摘されると上司としては衝撃を受けるかもしれませんが、結局のところ仕事の効率が上がれば、それは自分の業績につながります。