11月16日から22日まで、一連のアジア太平洋地域の閣僚・首脳会合が開催された。今回の会合では、南シナ海問題をめぐって米中両国やアジア諸国がどのような姿勢を見せるかとともに、アジア太平洋地域の経済統合に対する各国の対応に注目が集まっていた。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉が大筋合意に至った後の、同地域における最初の閣僚・首脳レベルの会合であり、TPP非参加国が今回どのような対応を示すのかが、今後の同地域の経済統合の行方を占う鍵になるとみられていたのである。
今回、アジア太平洋地域の経済統合の進展に関し、2つの注目すべき動きがあった。1つはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)をはじめとする“メガFTA”に関する動き、もう1つはTPP拡大に向けた動きである。
アジア太平洋地域のルール作りをめぐって
激しくなる米国と中国の綱引き
米中両国や日本を含むAPEC(アジア太平洋経済協力)参加21ヵ国・地域は、将来的にFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現を目指すことで一致している。しかし、FTAAPのあるべき姿については同床異夢の状況にある。
オバマ米大統領はTPP交渉が大筋合意に至る過程で、アジア太平洋地域のルール作りを中国が主導することを牽制する発言を繰り返した。これらの発言は、TPP実現への支持を得るための国内向けメッセージとしての性格を強く持つ一方、米国内外でこれはオバマ政権の「本音」であると受け止められた。
他方で、今回の一連の会合の間には、TPPがアジア太平洋地域の新たなルールの土台となることを牽制する発言が、中露両国からあった。AIIB(アジアインフラ投資銀行)にアジア諸国だけでなく、欧州諸国をも引き込み、一帯一路構想を進める中国に対し、TPP交渉大筋合意で巻き返しを図る米国、という図式は単純に過ぎるかもしれないが、アジア太平洋地域、ひいてはグローバルな経済ルール作りをめぐり、米中による他国を巻き込んだ綱引きは一層激しくなっているように見える。
この綱引きを象徴するのが、今回のAPEC閣僚会合の声明と首脳宣言である。