社員のモチベーションを考える上で、はずせないのがオフィス環境だろう。居心地のよい環境、働きやすい環境であることはもちろん、人の思考や行動パターンを分析し、最も生産性のあがるオフィス空間を作る試みはすでに多くの企業で採り入れられている。

 その一方で、オフィス自体にかかるコストは大きいことも確かだ。それだけにオフィスコストの削減はぜひ考えたいものの一つだが、実際に社員のモチベーションに大きく関わり、さらにほかのコスト削減法に比べて大規模な変化を伴うことだけに、躊躇する企業もあるだろう。

 または、モチベーションが落ちることがわかっていても、オフィスコストの削減を避けられないという企業も多い。

 オフィスコンサルを手がけるITOKI(本社:大阪市)ソリューション企画推進部デザイン推進室室長 小玉宏明さんは「リーマンショック以降はコスト削減がテーマのオフィス移転やリニューアルの相談が多かった。人員削減に伴う事業所の縮小や、オフィス維持費を抑えるための移転です」と話す。

 それでは、オフィスコストの削減を行いながら同時に社員のモチベーションを向上させる試みとしては、どのようなことが考えられるのだろう。

デスク削減や共有部分の見直しで
オフィスを有効活用

 都内の大手通信会社の管理部署がリニューアルした際の例を挙げよう。

 部署内は約80人。このオフィスではリニューアル後にオフィス面積を26%削減した。これは賃料ベースで年間約1800万円、1人あたり約22.5万円のコスト削減となった。

 オフィス面積を減らすために行ったことは大きく分けて3つ。1つはペーパーレス化。ノートPCによるモバイルワーク、会議資料で紙を使わずにモニター表示にするなどペーパーレス業務を徹底し、オフィス内のプリンター複合機を3台から1台へ削減した。これにより、1人あたりの収納量を半減させることに成功した。 

 2つ目はフリーアドレス化の導入だ。個人席を作らず、ノートPCをメインの執務スペースにある机のどこでも使えるようにすることで、作業スペースを縮小。集中業務や機密業務のための個室は別に2席を用意した。