日銀による2010年3月短観では4期連続の改善基調と発表された。マクロ的な視点では日本経済は回復傾向にあるらしい。しかし現状としては、ボーナスのカットなど企業の人件費削減によって、依然、従業者のマインドは冷え込んだままだ。

 企業経営者には、先の読めない時代に、人件費を含む様々な面でのコストカットを推し進めたいという考えがある。特に人件費、事務所家賃、消耗品代など、毎月必要になってくる固定費は、経営規模が小さい中小企業ほど、いざと言うときに会社を苦しめる大きな負担になる。社員が気合を入れてカラーでプリントした分厚い会議資料にも、社長は良い顔をしていないかもしれない。

 しかし一方で、残業費を減らす、個人に携帯電話を支給しない、といったコスト削減は社員のモチベーションを下げ、かえって会社に悪循環をもたらす可能性が高い。

コスト削減で業務が非効率になり
モチベーションも低下

 gooリサーチでは昨年の12月、2008年9月以降にコスト削減を行った中小企業の社員524人に対して「モチベーションとコスト削減(経費削減)に関する意識調査」を実施した。

 会社で実施されているコスト削減を聞いたところ「コスト削減によって業務が非効率になったと感じたことがありますか」という質問に「ある」と答えた回答者は半数を超える52.1%だった。

 これまで営業成績を伸ばすことを最優先して行ってきたはずの業務が突然「コスト削減」を理由に非効率なものになったとすれば、社員も戸惑いが大きいだろう。「コスト削減によって働くモチベーションは下がると思いますか」の質問に「大変思う」「思う」と答えた人は合わせて61.2%、さらに驚くべきことに「コスト削減が退職(転職)を考える際の一つの要因になりますか」では、37.8%が「なる」と答えている。

質問:コスト削減によって働くモチベーションは下がると思いますか

 もちろん、これは従業員だけでなく、経営層にとっても頭の痛い問題である。同社のアンケートでは中小企業の経営層(部長職や取締役など)約400人を対象に調査をし、同様にコスト削減とモチベーション低下について聞いたところ「コスト削減によって、社員間で不満が出ていると感じていると思う」が48.8%にのぼった。