その理由は、いうまでもなく上述の過労自死事件です。過労自死事件それ自体は、2008年の出来事でしたが、2012年2月に、神奈川労働者災害補償保険審査官に、「長時間労働による精神障害が原因」として労災認定されたことで、「ワタミはブラック企業である」とのイメージが世間に広まっていったのです。

 損害賠償請求訴訟に対し、初めは強気な姿勢を見せていたワタミ側も、この2年の極端な業績の落ち込みを前に、次第に態度を軟化させていきました。

 決算書を見る限り、今回の和解はワタミにとって本当にギリギリのタイミングでした。もちろん、この和解によってワタミがどこまで再生できるかは、まだわかりません。しかし少なくとも、このタイミングを逃していたら、ワタミはもう決して浮上することはできなかったでしょう。決算書の数字は、そんな厳しいワタミの台所事情を明確に示していたのです。

なぜ「稼ぎ頭」だった
介護事業を売却したのか

 そして、2015年のワタミは、もうひとつ、再生を期した重大な決断を行いました。

 それは、介護事業の売却です。

 その背景を知るために、まずは2002年度以降の、ワタミの総資産・負債・株主資本(自己資本)の金額を見てみましょう。

ワタミが過労死訴訟で和解した理由は、決算書で読み解ける


 総資産の金額を見てみると、ワタミは年々、事業を大きく伸ばしていることがよくわかります。しかしその一方で、株主資本の金額はあまり増えておらず、代わりに負債の金額が急速に膨らんでいます。

 この状況をよりわかりやすくするために、ワタミの自己資本比率をグラフにすると、次のようになります。

ワタミが過労死訴訟で和解した理由は、決算書で読み解ける

 2012年度までのワタミは、赤字経営をしていたわけではなく、毎年黒字を上げていました。しかし、それでも自己資本比率が大きく落ち込んでいたのは、負債の増加が著しかったためです。

 では、ワタミは一体、何のためにここまでの負債を抱えることになったのでしょうか。