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JINSが挑戦する米国メガネ市場
日本流の再現をスタートアップとの協業で実現

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第371回】 2015年12月25日
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オンラインの検眼サービスを提供する
ベンチャーと提携

「20/20 Now」の遠隔検眼サービスのイメージ
(同社のWebサイト http://www.for2020now.com/Content2/howitworks/ より)

 同社が目を向けたのは、スタートアップである。ウェブでリサーチを重ねて見つけたのが、ボストンを拠点に2012年に創設された「20/20 Now」という会社だ。20/20 Nowは、眼科医が利用する検眼機器をネット化して提供するサービスを展開していた。連絡をすると、すぐにサンフランシスコ店にやってきて、あっという間に話がまとまったという。しかも、20/20 Nowもこれまでやったことがない、遠隔による検眼サービスにも踏み切ることになった。

 ジンズ店内の一角に設けられた20/20 Nowの部屋に行くと、遠隔地にいる検眼技師がネット経由で機器を操作しながら検眼を行う。視力検査は、レンズを何種類も取り替えながら行われるが、それもスクリーンに映る技師がインターネットを介して操作する。検査機がまるでひとりでに動いているかのようである。検眼を終えると、眼科医が確認して処方が出される。

 20/20 Nowはジンズ店内に間借りをするかたちで出店している。あくまでも別店舗という扱いだが、処方のない客はここで検眼を受けてからすぐに隣のジンズでメガネ・フレームを選び、30分後には新しいメガネを手にして店を後にできる。通常アメリカでは、検眼に出向き、その後フレームを選んでから実際にメガネを手にするまで1~2週間もかかるのとは大きな違いだ。

 ジンズでは、さらにもう1社のスタートアップとも提携した。「ボークシー」(Bauxy)は、インターネット上でメガネ保険の手続きを行うサービスを提供する。サンフランシスコで2014年に創設された会社である。こちらは、開店して間もないジンズの店舗に創業者が訪れて知り合った。

 アメリカでは、健康保険によっては1年に1回などの頻度で新しいメガネを作るのに保険がきく。ただ、その場合は、保険会社の指定するメガネ店に行かなければ、煩雑な保険手続きのほとんどを自分で行わなければならない。ボークシーは、そうした保険会社のネットワークに入っていない店で購入したい客のために申請を肩代わりして行う。スタートアップ流のスピード感のおかげで、数日後にはサービスを開始することが可能になった。

 日本流の至れり尽くせりのサービスを実現しようとすると、業界の慣例や制度の壁がそれを阻む。ジンズは、それをアメリカのスタートアップのサービスをパッチワークしてつなぎ合わせることで達成しようとしているわけだ。

 「スタートアップに目を向けなければ、既存業界にないサービスは提供できない」と木村氏は語る。日本風のサービスとアメリカのスタートアップは、従来の業界の方法を変えようとする点で、意外にも目的を共有しているのである。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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