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地域金融機関のファンドラップ提携が、新たな時代を迎えている。証券口座で最適ポートフォリオを示す従来型に対し、銀行口座を起点に顧客の目的(ゴール)から運用計画とプロセスを組み立てる手法が存在感を増しているのだ。市場拡大の一方で、当局の問題提起や残高の伸び悩みも重なり、各行の戦略は大きく揺れ動いている。長期連載『金融インサイド』の本稿では、外部提携先のプラットフォーマーと地方銀行の実名を挙げ、図解で提携の変遷をたどりながら、次の競争軸を読み解く。(日本資産運用基盤 事業本部執行役員 直井光太郎)
ファンドラップの外部提携に新潮流
地銀の実例で新たな競争軸が分かる
地域金融機関のファンドラップ(投資一任契約、以下FW)を巡る外部提携に、新しい動きが生まれている。
FWとは、顧客が金融機関に資産運用を一任し、あらかじめ合意した方針に沿って運用・リバランス・報告までを包括的に受けるサービスである。忙しくて運用に時間を割けない、投資判断に自信がないといった層のニーズと共に、富裕層まで幅広く活用が広がってきた。
これまで主流だったのは、証券口座による最適なポートフォリオを提供する、ポートフォリオ重視型のFWだ。
ところが足元では、銀行口座を起点に、顧客の目的(ゴール)から逆算して運用計画を組み立てるゴールベースアプローチへの流れが強まっている。次ページで詳しく述べるが、成果物の付加価値がポートフォリオそのものから運用プロセスへと広がり、地域金融機関の対面力を生かしやすいモデルが前面に出てきたのだ。
この10年で地域金融機関におけるFWの導入は急速に進み、地方銀行97行中43行、信用金庫4金庫、ゆうちょ銀行、JAバンクが取り扱いを始めた。日本投資顧問業協会によると、2025年9月時点のFW市場は24.2兆円と過去最高を更新し、存在感を高めている。
次ページでは、地域金融機関のFW提携がどこで分岐し、いま何が主流になっているのかを、提携相手のプラットフォーマーと地銀の実名を挙げながら図解と共に紹介する。
証券口座を前提にした富裕層向けの証券ラップが、なぜ銀行口座起点の銀行ラップへ広がり、さらにゴールから逆算するプラン・プロセス重視型へと重心を移しているのか。各行が選んだ一手を並べると、次の新たな競争軸が見えてくる。







