サ高住トップの
メッセージが身売りの事態に

 サ高住がフットライトを浴びてきたその最中に、サ高住のトップ事業者が舞台から姿を消すことになった。アミーユのブランドで全国チェーンを展開してきた「メッセージ」である。メッセージを買収するのは損保ジャパン日本興亜ホールディングス(損保ジャパン)。

 メッセージはグループとして介護付き有料老人ホームとサ高住、それに訪問介護などの在宅サービスを運営している。2014年度の売上高は789億円で、ニチイ学館、ベネッセホールディングスに次いで介護業界第3位。

 メッセージの創業者の橋本俊明医師は、かつて岡山で病院長だった。2000年4月の介護保険制度がスタートする直前にグループホームを手掛け、介護事業に進出。日本で初めて制度化された認知症ケア事業としてグループホームは注目されていた。

 だが、規模が小さいグループホームでは事業拡大を望めないとみて、有料老人ホームに参入する。介護保険で「特定施設入所者生活介護」として在宅サービスのひとつに位置付けられ、新たな報酬が得られることになったからだ。

 4~5年後には、介護付き有料老人ホームが全国的に増え、介護保険料の上昇を懸念した自治体がいわゆる「総量規制」という抑制策に乗り出し、開設がままならなくなる。そこへタイミングよく、国交省がサ高住制度を2011年10月からスタートさせる。メッセージはいち早く方針転換。「Cアミーユ」のブランドでサ高住の全国展開を始めた。

 厚労省による福祉サービスでないため逡巡していた業界人を尻目に、破竹の勢いで次々サ高住を建設。1室あたり助成金100万円の後押しもあり、2015年8月末時点で、サ高住と有料老人ホームなどの居室数は1万7490室に達した。第2位のベネッセスタイルケアを2600室も引き離して業界トップの座を不動のものとしていた。

 橋本氏もサ高住の業界団体のトップに就任し、高齢者住宅の顔となった。

介護事業の現場は変わるか?

 順風満帆に見えていたが、昨年9月に不祥事が発覚する。子会社が手掛ける川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で3人の入居者が相次いで転落死する事故が判明。その後、各地の系列施設で暴行、暴言、虐待行為も明らかになり、11月には厚労省から介護保険法による業務改善勧告を受けた。行政への自己の届け出違反などもあり、遂に創業者の退陣に追い込まれてしまう。

 介護業界独特の低賃金による離職者増、人手不足が現場のケアの劣化を招いたと言われる。適性に問題がある他業界からの転職者を採用せざるを得ない状況はほとんどの事業者が抱えている。その中で、メッセージは異常なほど立て続けに建物を作り続けたため、職員の介護力が追い付いていかなかったようだ。

 実は、損保ジャパンがその直前に買収した居酒屋大手のワタミの介護子会社「ワタミの介護」も同様な問題があった。加えてワタミの場合は、外食チェーンの本社自体が「ブラック」の烙印を押されて、事業悪化の道を辿っていた。

 損保ジャパンは、2012年に九州で有料老人ホームを運営しているシダーの株式34%を取得している。10月に正式に買収したワタミを「SOMPOケアネクスト」と社名変更しており、アミーユも近々「SOMPOケアメッセージ」に変更する。

 今のところ、両社の統合は表明されていない。だが、共に不祥事を起こした事業者をそのままの路線で継続させることは難しい。業界外の一般大企業の傘下に入ったからには心機一転させなければ、買収効果は得られないはず。

 賃金や労働条件など現場の処遇も、普通の大企業のてこ入れで大幅に改善されると見る関係者は多い。損保ジャパンが果たしてどの程度まで「本気」で介護事業に取り組む姿勢なのかが注目される。