埼玉育ちの社長がつくる
「広島プレミアムトップかき」

海外の高級ホテルが「広島かき」を採用し始めた理由鈴木隆さん。「マグロやクルマエビのようにエサを大量に使わない、カキ養殖はポテンシャルの高いビジネス。若い人たちも参入できるモデルケースを作っていきたい」と意欲を燃やす

「広島プレミアムトップかき」生産者として認定されている「ファームスズキ」。瀬戸内海のほぼ中央に位置する離島・大崎上島で養殖を行い、日本では唯一という珍しいブランドかきが、いま全国から注目を浴びている。

 社長の鈴木隆さんは、「広島は、いろいろな意味でカキを養殖するには素晴らしい環境です」と語る。

 鈴木さんは、もとは東京の水産卸売会社に勤務するサラリーマンだった。出身は、広島ではない。

「育ったのは、海のない埼玉県です(笑)。子どものころから無類の魚好きで、川で釣った魚やら、なまずを家で飼ってましたね」(鈴木さん)

 幼少のころから「養殖」が趣味だった鈴木さん。自然な流れで山口県下関市・水産大学校に入学した。在学中、下関市内の水産加工会社でアルバイトをするうちに、いつか自分でも水産会社を興したいと考えるようになった。

「20代のうちは、大手の水産会社に行って、なるべくグローバルな経験を積みたい」と築地の水産卸売会社に入社。

 配属されたのはエビ部エビ課だった。

「インドネシアの会社が養殖したエビを、冷凍加工して輸入、販売するのが僕の仕事でした」

 インドネシアで気がついたことは、世界各地から、バイヤーが買い付けに来るなかで「現地では日本人に売るのがいちばん嫌がられていた」ことだった。

 日本人は規格にうるさく、買い付けのボリュームが少なくて利益にならないというのがその理由だ。

「欧米の、たとえばウォルマートやカルフールといった大手は、大きな売り場を持っているためサイズについても基準がゆるく、買い付けも日本が1回の商談で制約するのが1コンテナレベルなのに、むこうは100コンテナ、200コンテナと、単位がケタ違いだったんです」

 いったい世界の魚介類マーケットはどうなっているのだろう?

 鈴木さんは仕事で向かっていたアジア以外にも世界各地で好まれる水産物や養殖の見聞を深めるべく、休暇のたびにアメリカやヨーロッパなどの市場や、養殖場へ自主視察を重ねた。

「次第に、将来は輸入でなく日本で作ったものを海外へ輸出する会社が、面白いんじゃないかと考えるようになりました」

 そこで思い付いたのが、カキだった。

「世界各地を回って、日本では冬の食べものとされているカキが、どんな国でも生で1年中食べられていることが印象的でした」

 世界中で食べられていて、養殖できるため安定して出荷できる。しかも、日本のカキを海外で見かけることはなかった。 

「カキを海外で販売してみたい」と考えた鈴木さんは2008年、広島県のカキ加工メーカーと共同出資で、同社が製造したカキを海外へ販売する「ケーエス商会」を立ち上げた。