海外の高級ホテルが「広島かき」を採用し始めた理由鈴木さんは陸上で種苗を人工種苗生産し、陸上水槽で飼育したのちに地下海水で満たした塩田跡の養殖池で育てる完全陸上養殖を行う

 よって、鈴木さんは自社一貫という体制、そして種苗生産方法においても、海外同様にカキから精子と卵子をとり、人工的に種を作る「人工種苗生産」を行い、それにあたっての親貝の管理も欧米に倣った。

「カキは遺伝子がとても大切なので、いいカキを作ろうと思うなら、いい親を選別してそこから卵をとり、親貝に仕立て上げることが大切とされています。サラブレッドと同じ。ここまで行う生産者は日本にはいなかった。この体制を整えなければ、海外では通用しないと思いました」

 これについては「広島という場所でのスタート」が成功した、と鈴木さんは語る。

「広島県水産技術センターにはカキのエキスパートがたくさんいらっしゃいます。筏による天然採苗ではなく、シングルシード用人工種苗生産の研究はとても進んでいました」

 センターに人工種苗生産の技術指導を仰ぐとともに、ファームスズキで最もかたちと成長がよかったカキをセンターに預け、飼育の上、鈴木さんの生産計画に合わせて的確なタイミングで親貝に仕立て上げる。

「民間の会社ではコストもかかります。いい子どもができるかどうかはカキの品質や、生産の安定にとっていちばん大切ですから、広島県にいなければ実現できませんでした」

 さすがカキ県・広島、である。

ブランド力がアップ! 
国内、海外のオイスターバーへも続々進出

海外の高級ホテルが「広島かき」を採用し始めた理由「塩田熟成牡蠣(クレールオイスター)」。塩田跡の養殖池で、「かき小町」を3ヵ月から半年、7~8cm程度に育てて出荷する。豊かな甘みがたまらない!

 かくして誕生した生食専用の「塩田熟成牡蠣(クレールオイスター)」は甘みが強く、芳醇でマイルドなこっくりした味わい。1~4月には見事な「幻のグリーンオイスター」になる。

 グローバルレベルで育ったファームスズキのカキは、オイスターバーや評判を聞いた個人客から注文が相次ぐ。また「塩田熟成」と特徴がはっきりしていたこともPRに役立った。

海外の高級ホテルが「広島かき」を採用し始めた理由「塩田熟成縞牡蠣(ストライプオイスター)」。殻に縦縞があるのが特徴で、広島の原生種といわれ300年の歴史がある

 海外への輸出も順調だ。商談会や展示会に積極的に出店し、いまは中国、台湾、タイ、ロシアへ進出。高級ホテルのオイスターバーでも提供され、高い評価を得ている。

 現在、養殖場内に3月のオープンを目指して、レストランを建設中だ。ここを拠点にファンを増やし、ゆくゆくは広島を訪れる外国人観光客向けのツアーを組み、海外の個人客への拡大も図りたい、と鈴木さんは語る。

 広島県は、首都圏でのブランド力向上と販売促進のため、銀座・広島県ブランドショップ「TAU」や東京のオイスターバーと連携してイベントやフェアを大々的に開催。

 PR効果は大きかった。広島県水産課の前田克明さんは、「生産者からは、これまで、オイスターバーで『広島のカキはちょっと…』と言われていたけれど、イベントの評判がよくて取り扱われるようになったという声が増えました」と語る。

 広島県では今後も生食用殻つきカキのブランド力をアップするとともに、さらなる技術研究によって、夏の生食用カキの出荷を目指し、EUも視野に入れた海外輸出への取り組みを検討する予定だ。

 広島の豊饒な海、技術、生産者の努力が育んだカキが、名だたる世界各地のオイスターバーを賑わせる日が楽しみだ。

<取材ご協力>
広島県産応援登録制度 かき

ファームスズキ

オイスターバーMABUI袋町