1人ひとりに焦点を当てる
「タレントマネジメント」
行き過ぎた成果主義、不況に伴う雇用調整、そして、それらに伴う従業員のモチベーションダウンと、企業における人事施策にも閉塞感が漂う。しかし、景気回復の兆しが見え始めた今日、その波に乗って経営を立て直すためにも、事業運営の柱となる従業員の力を発揮させる人事施策を打つべきではないだろうか。
そこで着目したいのが、「タレントマネジメント」という手法である。その名の通り、1人ひとりの能力(タレント)を把握し、それを活かすべく、効果的かつ統合的にマネジメントしていくというものだ。
タレントマネジメントは、日本では馴染みのない言葉だが、欧米企業ではごく一般的に行われている手法である。肌の色も違えば、言葉も文化も違う――それが当たり前の大陸国家だからこそ、1人ひとりを把握することから始める必要があったためだ。一方、単一民族(厳密には違うが)の島国である日本では、何をするにしても“あうん”の呼吸で成り立ってしまう。相手をよく知らずしても、何でもそつなく行えてしまうのである。
ところが昨今では、働き方1つとっても、1人ひとりが異なる考え方を持っている。かつてのように出世や高給取りを目指す人もいれば、ほどほどに働いて人生をエンジョイしようという人もいる。家庭の事情で、働くことばかりに専念できないという人もいるだろう。ましてや、女性の社会進出の進展やグローバル化による外国人採用などによって、組織内の人材の多様化は、より拡大する傾向にある。そうした今日だからこそ、1人ひとりに焦点を当てたタレントマネジメントが必要になってくるのではないだろうか。
日本企業が抱える
人事施策の盲点
欧米企業で行われてきたタレントマネジメントは、そもそも有能な人材を発掘して優れたリーダーをつくることにあった。クロトンビルと呼ばれる養成機関を設けて有能なリーダーを輩出し続ける米国GEなどは、その典型であろう。しかし、このたびの世界不況を受けて、その考え方も変わってきた。日本マクドナルドの人材開発責任者を経て、大手から中小・個人企業まで幅広く人材コンサルティングを手がける人財ラボ社長・下山博志氏は次のように語る。