財政破綻・国債暴落を語る人は多いが
長期金利は一向に上がらないという現実

国債暴落のリスクは言われ続けているが、現実化していない

 昨年12月17日付の本コラム(「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か)で、国の借金1000兆円と言うが、国のバランスシートからネットで見て500兆円、国と日銀(「統合政府」ベース)とのバランスシートを見れば、200兆円程度であることを書いた。

 世の中には、財政破綻を煽る人は多い。財政破綻すると国債暴落になるので、国債暴落と言い続ける人も財政破綻論者と同類である。ただ、この暴落論は十年一日のごとく語られてきたが、幸いなことにまだ実現していない。昨年の本コラムのようにバランスシートで日本の財政事情を正しく理解していれば、そうした暴落論が荒唐無稽であることがわかるだろう。

 一般の人やマスコミが騙されるのは多少わかるが、学者でも暴落論を語る人がいるのは驚くばかりだ。

 東大金融教育センター内に、凄い名称の研究会がある。「『財政破綻後の日本経済の姿』に関する研究会」だ。代表は、井堀利宏・東京大学大学院経済学研究科教授、貝塚啓明・東京大学名誉教授、三輪芳朗・大阪学院大学教授・東京大学名誉教授という日本の経済学会で名だたる学者だ。

 活動内容はホームページに記載されており、2012年6月22日が第1回会合で、2014年10月3日まで2年余で22回も開催されている。

 研究会発足にあたり、「われわれは日本の財政破綻は『想定外の事態』ではないと考える。参加メンバーには、破綻は遠い将来のことではないと考える者も少なくない」と書かれている。

 第1回会合では、三輪氏が「もはや『このままでは日本の財政は破綻する』などと言っている悠長な状況ではない?」という論点整理メモを出し、勇ましい議論をしている。要するに、財政破綻は当然起こるので、破綻後のことを考えようというわけだ。

 はじめのうちは、財務省、日銀らの実務家を呼んでいた。その後、安倍政権が誕生し、アベノミクスに関心が移る。2013年4月12日の第11回では、インフレ激化、財政破綻が顕在化などとアベノミクス(量的緩和)にかなり懐疑的な様子だ。ところが、長期金利は一向に上がらない。