山谷の賃金相場はずっと高い
ただしピンハネも横行

山谷の工員募集看板。日給の相場は西成よりずっと高い  Photo by Kenichiro Akiyama

「山谷では雑工や土工は日給1万1000円が相場だね。手に職がある俺たちは最低でも1万5000円から2万5000円くらい貰ってるよ。もちろんアゴ足付きだよ。サラリーマンの人と一緒でさ。業界長いから日給も高いんだよ。だから仕事にもありつけない。困ったもんだね」。山谷で話を聞いた労働者は語った。

 ただし、この賃金が額面通りに貰えるとは限らない。

「朝仕事に出て、夜帰してくれる仕事がなかなかない。泊まり込みでの仕事は嫌だからね……」。なぜ日帰りの仕事にこだわるのか。僻地の工事現場での住み込みの仕事は厳しい環境下に置かれるためである。

 この労働者の話によると、数年前、日雇い労働者を募り現場まで連れて行く“手配師”と呼ばれる人材派遣業者から「日給1万5000円、衣食住も心配ない」という条件を提示されたのでこれに応募。マイクロバスに乗り故郷でもある東北地方のある現場に赴いた。だが行ってみるとまったく話は違っていた。

「確かに日給は1万5000円だった。でも寮費として3000円、食費に3000円、風呂代が2000円、洗濯・トイレットペーパー代という理由で2000円差し引かれた。手元に残るのは5000円だ。ちょっと酒を飲もうにもワンカップの酒1杯500円、缶ジュース1本300円。僻地なので輸送料がかかるからと聞いたけれど納得できなかった」

 さらにこの日給、雨などで建設、剪定などの作業が行えない場合は支払われることはない。その場合でも寮費や食費、風呂代など合計1万円は差し引かれる。

「過去、事件になったような“タコ部屋”ほどではなくても、それに近いものは山ほどある。僻地に連れて行かれても衣食住完備というわけではない。自己負担の経費を差っ引くとマイナスになることもある。それが嫌で逃げ出す者もいるくらいだ。暴力的なことはなかったし仕事が終わると山谷まで帰してくれたけど、条件は悪かったね。でも今思えばそれでも仕事があったからよかったよ。今はそんな仕事すら山谷ではないね」

 山谷の労働者は話し終えると、「もし可能ならば西成に行きたい」と語った。