あいりん地区で声かけしていた手配師の話にも、それがうかがえる。「低賃金だと山谷では敬遠される。だから山谷ではもう人を募ることは難しい。しかし西成だと悪条件でも募集に応じる労働者もいる。もっとも肌感覚だが応募するのは山谷から流れて来た人が多い感じがする。生粋の西成に住む人の応募は少ないね」。

 年末年始、12月29日から1月5日まで。大阪市では無償で西成に住むホームレスや労働者を臨時宿泊所に収容している。だがここでも長年西成に住み着いている人よりも東京・山谷など全国から流れて来た人が目立つ。

超低賃金の仕事の集中が
西成の“好景気”の正体

 西成と山谷の“景況感の違い”は、つまりこういうことだ。

 先述したように、今、公共事業数は全国的に減少傾向にある。それでも日雇いの労働力は必要だ。だが高い賃金は支払えない。安価な労働力に頼らざるを得ず、結果、条件の悪い仕事が増える。

 しかし東京・山谷をはじめとする全国各地では、低賃金、長期拘束など、悪条件での募集に応じる者は少ない。こうした状況を見越して募集側もそれらの地域では、募集を控える傾向にある。

 ところが西成ならば、条件の良くない仕事でも応じる者がいる。そのため募集業者も西成に集中する。これがもともと賃金の多寡にはこだわらない西成の労働者には好景気と感じる要因だ。一方、山谷などでは、さらに仕事が減り不景気と感じる。安価でもいいのでとにかく仕事が欲しい労働者は、いきおい、西成に流れ着く。

 西成での“活況”は、超安価な賃金で働く労働者を求める業者と、それでも構わないと考える労働者の間で繰り広げられているだけに過ぎない。実際は好景気でも何でもない。

 西成、山谷の現地に足を運び見えたのは、そんな厳しい現実だった。