経済産業省の新たな規制をめぐって石油業界が揺れている。なかでも「大あわてでは」とささやかれているのが東燃ゼネラル石油とコスモ石油だ。
経産省が進めているのは製油所の廃止を促す新規制。4月に案が示され、まもなく細目が決まる見込みだ。規制に背けば、行政処分の対象ともなる。
表を見ていただきたい。独自取材による、新規制の影響度試算だ。件の東燃ゼネラルは、製油所の能力を日量約20万バレル削減する必要に迫られることがわかる。
東燃ゼネラルは「案は明確でない点もあり、対応を検討中」とするが、仮に、競争力が相対的に低い和歌山製油所を閉じたとしても、削減量はまだ足りない。追加的な削減を迫られることになる。
コスモも同様だ。コスモは昨年、堺製油所に1000億円を投じて装置を増強、8万バレルの削減も打ち出した。「3年で方向性を出す」と言うが、相対的に競争力の低い坂出製油所を閉じるなどの策を講じないとクリアできない。
経産省の新規制は昨年、施行された「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、石油の有効利用を図ろうというもの。その有効利用の判断基準を、経産省は「重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力=重質油分解装置の装備率」とした。
分子の重質油分解装置とは、原子力発電所の稼働などで今後、需要の減る重油を、付加価値の高いガソリン等に変える装置。原油を蒸留し、ガソリンや重油などに分ける分母のトッパーに対し、その装備率が高まるほど、石油の有効利用につながるわけだ。
じつは日本の装備率はアジア主要国の19%よりも低い10%。経産省は、2013年度までに13%へ引き上げる目標を掲げ、各社の装備率に応じ、改善を求めていく。
だが、装備率を高めるには、500億円規模の設備投資で分子を増やすか、能力の削減で分母を削るかのどちらかだ。実質赤字の各社の選ぶ道は、能力削減しかない。
製油所リストラが本格化するのは間違いない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)