1000人以上の経営者へのインタビューを15年近く続けてきた藤沢久美氏の最新刊『最高のリーダーは何もしない』。

前回は、経営理念を守りつつ、時に大胆な決断をしたことで危機を乗り越えた老舗企業のリーダーを紹介した。老舗企業に代表される日本型経営は海外でも再評価されているというが、その真意は?

▼連載 第5回▼
悩めるリーダーは「同族企業」を見よ

▼連載 第4回▼
優秀なリーダー2つの条件
——「戦略性」と「きれいごと」

▼連載 第3回▼※人気記事!!
「動き回るリーダー」ほど仕事がおそい!?

▼連載 第2回▼
「指示しない職場」で業績が伸びている

▼連載 第1回▼
「頼れるボス猿」から「内向的な小心者」へ…
優秀なリーダーの条件が変わった!

日本型経営が生み出した
世界最多の「100年企業」

国内では何かと批判の対象になりがちな日本型経営ですが、海外では、世界最多の「100年企業」を生み出してきた経営のあり方として再評価されつつあるようです。

次の一節はハーバード・ビジネス・スクール教授の竹内弘高さんと一橋大学名誉教授の野中郁次郎さんが書いた「賢慮のリーダー―『実践知』を身につけよ」という論文からの引用です。

日本企業は資本主義化が不十分だと批判されることが多かった。いわく、投資家へのリターンが十分でない、短期的な株主価値を最大化しない、機動的なオフショアリングを行わない、社員を解雇してコスト削減しない、経営トップのインセンティブとなる報酬を支払わない……。

だがその一方で、日本企業に対する根強い信頼がある。いわく、優れた日本企業は社会と共生している。社会目的を持って利益を上げている。日常的に共通善を『生き方』として追求している。道徳的な目的を持って事業をしている。(中略)こうした日本企業の理解は、これからの経営の理論と実践に影響するだろう。(中略)

企業と社会を対立させる古い資本主義とは対照的に、優れた日本企業は、リーダーが社会的目的を持ち続ける限り、資本主義に対する新しい共同体的アプローチの見本となるに違いない。

(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2011年9月号)