効率的経営から日本的経営へ
いくつもの日本企業の例を引き合いに出しながら、リーダーシップの新たなかたちを打ち出したこの論文は、アメリカでも話題になりました。
ハーバード大学などが日本型経営に魅力を感じている理由の1つは、リーマンショックです。
短期的に高い収益を求める効率的経営をよしとしてきた企業の多くが、金融危機とともに廃業を余儀なくされました。効率こそが経営の要諦と信じてきた経営者たちが、この現実を目の当たりにし、「企業の持続性」を意識するようになったのです。
リーマンショック以降、世界のトップリーダーが集まるダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)でも、企業の持続可能性に関するセッションが設けられるようになりました。同様の問題意識から、哲学者や宗教者も会議に招かれ、経営者との対話の場が用意されています。
私もダボス会議で、世界のトップ経営者たちが東大寺の北河原公敬長老と対話する席にご一緒したことがあります。
「戦わずに経営を続けるにはどうすればいいか?」「持続する企業になるために、2000年続く仏教から学べることは?」など、世界のトップリーダーたちが、日本型経営に通じる哲学を求め、真剣な眼差しで質問している姿がとても印象的でした。