「私は仕事を変わるたびに、新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないかを自問している」(『プロフェッショナルの条件』)
ドラッカーは、ヒトラーの台頭したドイツでは教壇に立つことも文筆に生きることもできないことを知って、英国に渡った。保険会社で株式運用担当を務めた後、マーチャントバンクでパートナー補佐の仕事に就く。
3ヵ月ほどしてパートナーの一人に呼びつけられ、前職の株式運用の仕事をいつまでもやっているのではない、とこっぴどく叱られる。
「パートナー補佐として成果をあげるには、何をなすべきと思っているのか」
こうして目を覚まさせられたドラッカーは、仕事の内容も、仕事の仕方もすっかり変える。しかもそのとき以来、仕事を変わるたびに、「新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないか」を自問してきた。
ドラッカーはコンサルティングを60年以上も経験し、たくさんの人事を目にしてきた。ところが残念なことに、前の仕事で有能だった人の多くが実力を発揮できなくなっているという。
能力が落ちたのではなく、前の仕事の仕方をしているためにそうなっているのだという。
「新しい任務で成功するうえで必要なことは、卓越した知識や卓越した才能ではない。それは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において重要なことに集中することである」(『プロフェッショナルの条件』)