実は、今回の北朝鮮のミサイル発射に備えて安倍政権は、迎撃ミサイルSM3を搭載したイージス艦3隻に加え、地対空誘導弾PAC3を、防衛省など首都圏の他に、事前に北朝鮮が通告したミサイルの飛行ルートに当たる宮古島と石垣島にも配備した。

 ここで、二つのことを確認しておこう。まず、日本のミサイル防衛は、SM3だけでは十全ではなく、それが迎撃に失敗した場合に備えてPAC3が対応するという2段階システムになっているということである。次いで、そもそも実戦ともなれば、どこにミサイルを撃ち込むかを事前に通告するような「敵国」など存在しない以上、今回北朝鮮が公表した飛行ルートに基づいて先島諸島に急ぎPAC3を搬送したことによって逆に、ミサイル防衛システムが現実の戦争には全く対応できないことが如実に示された、ということである。

北朝鮮は原発を狙わない
「理性的な国家」なのか?

 今回、北朝鮮がミサイルの液体燃料に有毒物質ヒドラジンを使用している可能性があり、落下すれば半径数kmにわたり有毒ガスが漂い死者も出る事態に備えて、陸上自衛隊の化学防護部隊が先島諸島に派遣された。しかし、有毒ガスと放射能では、被害の深刻さは比較するまでもない。災害専門部隊を派遣するのであれば、北朝鮮のミサイルがルートを外れて、稼働中の鹿児島県川内原発に落下する事態に備えるべきであったろう。

 いずれにせよ、北朝鮮のミサイルに対して安倍政権が「いかなる事態に対しても国民の生命を守るために万全を期す」と強調するのであれば、原発へのミサイル攻撃という「最悪事態」に備えて、川内や高浜など稼働中の原発の周辺にPAC3を配備すべきであった。なぜなら、安全保障において「想定外」は許されないからである。さもなければ、ミサイル防衛システムを構築するために1兆5000億円を超える巨費を投じてきた甲斐がない、というものであろう。

 あるいは安倍政権は、1949年のジュネーブ条約第一追加議定書の56条に着目しているのであろうか。同条では、「危険な力を内蔵する工作物及び施設、すなわち、ダム、堤防及び原子力発電所は、……文民たる住民の間に重大な損失をもたらす場合には、攻撃の対象としてはならない」と規定されている。とすると安倍政権は、あくまで北朝鮮という国はこの国際条約を順守し、原発にミサイル攻撃を加えるといった非人道的な行為を犯すことなど考えられない「理性的な国家」である、とみなしているのであろうか。