アポロ管財株式会社(清掃業/東京都)の橋本真紀夫社長が「かばん持ち」をしたとき、私が「台には座らず、ホールを歩いただけ」だったのは、「出そうな台」が見当たらなかったからです。

「この台は、これこれ、こういう理由で出るかもしれない」というデタラメな仮説を立てて、打ち始める。出れば「仮説は正しい」ことが証明されますし、出なければ、「どうすれば出るようになるのか」を検証できます。

 しかも私は、自分の台だけでなく、両隣の台にまで目を配っています。
 ふつうの人が打つのは、目の前の1台だけです。私は、両隣を合わせた3台の出目(でめ)を見ながら、「どうしたら当たるか」を考えています。

 すると、たとえば「123」「184」「232」「654」「766」「677」では、どの出目が当たりに近いのか、高い確率でわかるようになります。

 また、人間にはその人なりの継続性がありますから、パチンコ店の店長は、基本的には同じサイクルで玉を出しています。

 したがって、店長の玉を出すサイクルを覚えてしまうと、「今日、どの台を出そうとするか」の見当がつくわけです。

負けた要因の裏に「勝てる要因」がある

 経営もパチンコも、人間のクセや心理を無視していたら、勝てません。
 私の場合は、データをもとに「お客様はどうしたら喜ぶのか」「ライバル会社の動向はどうか」を繰り返し検証しています。

 たとえば、「Aという商品の需要がBよりも大きくなりそうだ」と仮説を立てたら、Aを重点的に売ってみる。「Aがどれだけ増減したか」を数字で検証し、増えていれば、仮説の正しさが裏づけられます。

 パチンコで負けるのは、負ける要因があるからです。そして、負ける要因の裏には、必ず、勝てる要因があります。

 パチンコで負けたとき、「どうして負けたのか」を検証しない社長は、会社を改善することができません。

 仮説と検証をして、うまくいかなかったら「どうしてだろう?」と考える。
物事を一方向から見るのではなく、「こっちの方向から考えるとどうか、あっちならどうか」を検証するのです。

<著者プロフィール>
小山 昇
(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。
2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。
『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】
http://www.m-keiei.jp/