政府、与党は、生前贈与を活用した相続税の節税術を大幅に制限する内容を2023年度の税制改正大綱に盛り込む方針を固めた。12月15日にも公表予定の相続税・贈与税のルール改正案の骨子が関係者への取材で判明した。65年ぶりのルール改正となる生前贈与の「節税つぶし」で、実質的な相続税の増税だ。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)
生前贈与を活用した「節税術」にメス
相続税増税前に「駆け込み贈与」急増中
財産を生前に分割して贈与する場合、相続税よりも低い税率が適用される――。
生前贈与を活用した「節税術」にいよいよメスが入る。相続税・贈与税のルール変更を議論する政府税制調査会の専門家会合は11月8日、冒頭のように現行制度の問題点を指摘。「より中立的な税制を構築していく必要がある」と提言した。
相続税の節税の基本は、相続財産を減らすことだ。そのため生前贈与は“最強”の相続対策として広く利用されてきた。
贈与税には年間110万円までの贈与ならば非課税となる基礎控除がある。毎年110万円ずつ生前贈与して、10年間で1100万円分の相続財産を減らすといった手法は“鉄板”の対策だ。
例えば1億円の資産を持ち、2人の子供がいて、配偶者に先立たれた親が亡くなった場合、何もしなければ770万円の相続税がかかる。
一方、2人の子供に毎年110万円ずつ10年間贈与を続けて資産が7800万円まで減った場合、相続税は440万円だ。差し引き330万円節税できたことになる。
さらに、資産が多く相続税率が高くなる富裕層の場合、この110万円の非課税枠を超えた生前贈与で贈与税を支払ったとしても、贈与額によっては相続税の節税効果の方が大きい場合がある。
生前贈与を活用した節税術が封じられ、相続税が大増税されてしまう――。
相続税・贈与税のルール改正に向けて「本格的な検討を進める」との一文が2021年度の税制改正大綱で記されたことで、関係者の間でこうした認識が共有された。そして、制度改正前に「駆け込み贈与」して節税しようという動きが広まった。