ニデックの不正会計や日産自動車の経営危機、セブン&アイ・ホールディングスのグループ再編など、2025年は日本を代表する企業での経営の行き詰まりが表面化した。日本の「失われた30年」を象徴するのは、不採算事業や効率の悪い組織を温存し続ける停滞の構造だ。日・米・欧のルールが混在するグローバル市場で、日本企業が「稼げない体質」を脱却し、人や資本がダイナミックに動く土壌をつくるための条件とは何か。特集『高岡浩三の「企業の通信簿」』の本動画では、元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏、元ボストン コンサルティング グループ日本代表の内田和成氏、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏によるスペシャル鼎談で、日本再生に向けたヒントをお届けする。
「会社をつぶしてはいけない」という思い込み
最低賃金倍増、「大リストラ」が日本を救う劇薬になるか
日本の企業社会には「会社をつぶしてはいけない」という強い意識が働く。
しかし、元ボストン コンサルティング グループ日本代表の内田和成氏は、その意識こそが不正会計や不祥事の根底にあり、新陳代謝を阻害していると指摘する。本来であれば、経営に失敗した企業が市場から退出し、そこで培われた人材やスキルが他の成長産業へ組み替えられることで、経済全体の活性化やイノベーションが生まれるはずだからだ。
元ネスレ日本CEO(最高経営責任者)の高岡浩三氏は、こうした停滞を打破できない要因として、日本の「ガバナンスの欠如」を挙げる。社長の首をすげ替える力を持たない取締役会が、機能不全に陥ったまま古いビジネスモデルを温存している現実をどう変えるべきか。
2026年、AIの台頭によりホワイトカラーの生産性向上が不可避となる中、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏は「日本企業最大の課題はリストラではないか」と問う。北欧スウェーデンのように、あえて最低賃金を倍増させることで非効率な経営を淘汰し、失業者を国がリスキリングして成長産業へ送り出す。そんな「痛みを伴う循環」は、日本が再び成長軌道に乗るための現実的な選択肢となり得るのか。
1960年生まれ。83年神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。30歳で同社史上最年少部長に昇格。「キットカット」受験キャンペーンを成功させ、受験生の定番のお守りになるよう普及させた。2010年よりネスレ日本代表取締役社長兼CEO。オフィス向けの「ネスカフェ アンバサダー」を立ち上げ、新たな市場を開拓。20年3月、同社を退社。サイバーエージェント社外取締役。主な著書に『企業の通信簿』『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)、『ネスレの稼ぐ仕組み』(KADOKAWA/中経出版)、『世界基準の働き方』(PHP研究所)など。
東京大学工学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。日本航空を経て、ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年から04年までBCG日本代表を務める。06年度には「世界の有力コンサルタント25人」に選出。06年から22年3月まで早稲田大学教授。早稲田大学ビジネススクールでは意思決定論、競争戦略論、リーダーシップ論を教える傍ら、エグゼクティブプログラムにも力を入れる。主な著書に『客観より主観 “仕事に差がつく”シンプルな思考法』(三笠書房)、『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』『イノベーションの競争戦略』(東洋経済新報社)、『リーダーの戦い方』(日本経済新聞出版)、『アウトプット思考』(PHP研究所)、『できるリーダーが意思決定の前に考えること』(日経ビジネス人文庫)など、ベストセラー・ロングセラーが多数ある。
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。13年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。19年から教授。「Strategic Management Journal」「Journal of International Business Studies」など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP)がある。






















