原油安の直撃を受け、業界再編の嵐が吹き荒れる石油元売り業界。独立路線を歩むコスモ石油は、規模の論理ではライバルに太刀打ちできないが、ガソリンスタンドという既存インフラを活用して、従来にはなかった新規業態を本格展開。生き残りを模索する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

ガソリン需要は減少が確実
27兆円市場を取り込め!

――石油元売り大手5社はいずれも、前期から引き続いて原油安の直撃を受けており、5社合計の損失額は2期分で1兆円を大きく超える勢いです。現状をどう見ておられますか?

 コスモ石油は昨年10月、持ち株会社制に移行し、コスモエネルギーホールディングスの傘下に石油精製を行うコスモ石油、資源開発をするコスモエネルギー開発、そしてガソリン販売を担当するコスモ石油マーケティングの3社があります。私は販売担当会社の社長なのですが、原油安ばかりは一喜一憂をしても仕方がない。中長期的に見たとき、われわれ元売りにとって大きな問題となるのは、ガソリン需要の減少です。

たなか・しゅんいち
1981年横浜市立大学商学部卒業、大協石油入社。2005年、コスモ石油高松支店長、10年人事部長、12年執行役員、15年コスモ石油常務執行役員東京支店長を経て同年、コスモ石油マーケティング代表取締役社長兼東京支店長に就任 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 ガソリン需要は現在、年率1.8%から2%程度も減り続けています。10年経てば2割近くも減ってしまう計算です。もっと減るという見通しすらある。ハイブリッドカーや低燃費車が増えているからです。

 将来、もし電気自動車や燃料電池車が一般的になる日が来るなら、そもそもガソリンは必要ないということになる。原油安ももちろん大問題ですが、これまでのように、ガソリン販売を主体としたビジネスモデルでは、どのみち苦境に立たされます。

 そこで私たちが考えたのが、新たなロードサイドビジネスの展開です。

 日本の車関連需要36兆円のうち、燃料販売は約9兆円でしかありません。残りの27兆円は何かというと、車両販売や、損害保険、さらには車検や整備、パーツ販売などです。

 9兆円の、しかも確実にシュリンクしていく市場にしがみつくのではなく、残りの27兆円市場に打って出ようということで、2011年からカーリース事業「コスモスマートビークル」をスタートし、これから事業展開を加速します。

 全国に約3000あるサービスステーション(SS)を活用して、個人向けの自動車リースを核に、車検や修理、保険などのアフターサービスやメンテナンス需要も取り込もうという戦略です。

 リースならば、車両の所有権は当社にありますから、車検も保険も、さらに自動車税の請求も当社に来ます。お客様からすると、めんどうな購入後の諸手続きを自分でせずにすみ、ワンストップでサービスを受けられます。これはカーリースの大きな強みです。一方、当社としても、こうしたアフター需要をきちんと取り込めるビジネスモデルですから、収益機会が広がります。