春はスタートの季節。一般社会では新入生や新社会人が新たな生活を始める。スポーツ界も同様で多くの新人が厳しい勝負の世界でのチャレンジを開始する。
中央競馬(JRA)の新年度は3月1日からで、先週末は6人の新人騎手がデビューした。中でも注目を一身に集めたのが、16年ぶりに誕生した女性騎手・藤田菜七子(18)だ。
異例の交流戦騎乗で
「ひな祭りデビュー」を演出
周囲の期待の大きさはデビュー日の「演出」でもわかる。藤田はJRAの新人騎手だから普通なら先週の土日(5・6日)がデビューとなるが、運営組織が異なる地方競馬の川崎競馬の交流競走に2日前倒しして騎乗。女の子らしく3月3日の「ひな祭り」にデビューさせたのだ。
ファンの注目度も高く木曜の昼間開催だというのに7000人を超える入場者があった。これは通常の約2倍で、売上も2億近く伸びたそうだ。実際のレースでも堂々たる騎乗を見せた。当日は6レースに乗ったが、第5レースでは4番人気の馬を2着に、第12レースでも4番人気の馬を3着に導いた。2度も馬券に絡んだのだ。
そして迎えた5日の中山競馬の第2レース。騎乗したのは前走10番人気で10着に敗れたうえ3ヵ月の休養明けの馬だ。しかし、単勝8・1倍の3番人気(16頭立て)に押し上げられた。おそらく多くのファンが応援馬券を買ったのだろう。普通なら人気を裏切ってもおかしくないが、藤田はこの馬を2着にもってきた。中央競馬デビュー戦で連対を果たしたのである。
ゴール後の観客の反応にも驚くものがあった。多くは応援しつつも、馬券には絡まないと思っていたに違いない。ところが最後の直線で藤田は必死に馬を追い、1着馬に詰め寄った。その姿に感動を覚えたのだろう。場内からは盛大な拍手が沸き起こったのだ。