企業を襲う災害リスクは国内にとどまらない。海外でも自然災害や人災、さらにテロなどが多発している。BCP(事業継続計画)はCSR(企業の社会的責任)でもある。グローバル化が進む現在、日本企業のそれらへの備えは十分か。東日本大震災後のサプライチェーン防衛問題を見た前回に続き、上原修・日本サプライマネジメント協会代表理事の解説・提言をお送りする。

世界で多発する自然災害・人的災害
海外事業のサプライチェーン防衛が重要に

今年2月6日には台湾で地震が発生、大きな被害をもたらした   Photo:AP/AFLO

 東日本大震災から既に5年が経過したが、その間にも自然災害、あるいはそれ以外の多くの災害リスクが日本の社会を襲い、大きな被害をもたらした。

 企業においてこのような時、問われるのは、サプライチェーン・物流・調達の実務者が、実行面でどうすれば円滑に継続的に安定した調達を続けることができるか、すなわちSCP(Supply Continuity Planning)、いわゆる調達継続計画を具現化することである。前回は主に、東日本大震災後に日本企業のサプライチェーンにどのような変化があったか、課題は何かについて見た。だがSCPではさらに、日系企業の海外事業でのサプライチェーン(供給網)寸断にどう対処するかも、含めて考えなければならない。

 例えば、海外オペレーションに目を移した場合、現地諸国における生産・操業で実際に自然災害やテロに対する物流網遮断に対応する経営が適確になされているだろうか。グローバル化が差し迫った現状では、海外事業での堅固なサプライチェーン確保の実際的知識がますます重要になってくる。

 近年、地球温暖化を含めた自然災害、それに付随する人的災害が世界中で多発している。防災白書によると、1978年から2008年の30年間に発生した自然災害の内、約4割がアジアに集中して起こっている(下図参照)。同地域では、地震の多発地帯が多く、インド洋ではサイクロンも頻発し、かつアジアでの災害は膨大な人的被害ももたらす。被災者数で世界の9割、死者数で6割を占める。

◆世界の自然災害発生件数(対象期間:1978年~2008年)

出所:2010年版防災白書

 東日本大震災では、地震や津波といった自然災害だけでなく、原子力発電所事故による放射能漏れという深刻な「技術的災害」を伴っている。翻れば、日本と世界経済は、2008年のリーマンショックを契機とする「世界金融危機」も経験した。さらには、アフリカの多くの国々はいまだに紛争に直面する一方、テロ事件が先進国に深刻な影響をもたらしている。