三菱総合研究所は、これまで東日本大震災からの復興に関する提言を複数発表してきた。6月7日には、「有事に強いサプライチェーンの構築により、産業力を強化する(鍵を握るサプライチェーン・ガバナンス)」を発表した。本稿はその提言をベースに、主要な論点をとりまとめた。

 東日本大震災では、各所でサプライチェーンが寸断され、自動車、半導体、化学製品など、多くの産業で生産活動が滞ることとなった。そして、生産活動への影響は日本国内はもとより、広く海外にもおよんだことは周知のとおりである。一方で、このことは東北地方をはじめとする日本の製造業が、世界の生産活動においてに、依然、重要な役割を果たしていることを示している。

 わが国製造業が今後も高い国際競争力を維持するためには、今回の大震災の教訓を活かし、有事に強いサプライチェーンの構築を行うことが戦略的に重要となる。

顕在化したサプライチェーンの問題:
ノードの機能停止

 わが国では、これまでもサプライチェーンが地震等で被害を受けた例が複数ある。特に2007年7月に発生した中越沖地震では、自動車部品メーカーである「リケン」の柏崎事業所が被災し操業停止に陥ったことで、国内自動車メーカーのラインが停止した。しかし、東日本大震災によるサプライチェーンの被害は、従来と比べてあまりにも広域かつ甚大、そして同時多発的であった。このため、過去の教訓に基づき産業界が総力を挙げて対応したものの、早期のサプライチェーンの復旧は困難であった。