百貨店のお中元商戦に異変が起きている。各社のお中元全体の売り上げは、横ばいあるいは前年割れと苦戦しているが、自宅向けのお中元だけは売上高が伸びているのだ。

 高島屋で、今夏、人気を集めているのが、北海道・網走ビール株式会社の「流氷ドラフト」の詰め合わせ(写真、6300円)だ。オホーツク海の流氷を仕込水に用いた発泡酒で、ブルーの色味が特徴。藻の一種であるスピルリナを原料にしている。お中元カタログに掲載されている商品で、すでに3000セット以上売れているが、うち4分の1は自宅向けへの発送だ。

 同じく、有名店の筑紫樓の「ふかひれどんぶりセット」(5880円)は、自宅向け発送が3分の1にのぼる。「自宅仕様に贅沢どんぶり系は総じて人気」(高島屋)というが、なかでも小分けにされていて、小家族でも食べやすいのが受けていると同社では見ている。

 京王百貨店では、2008年の歳暮から自宅限定商品を取り扱っている。「のし」などをかけない簡易包装にすることで、贈答品より割安なのが特徴だ。例えば、ワケありスモークサーモンやカゴメジュースのセットは、贈答品より25%も割安に設定されている。この夏は、自宅限定商品が前年同期比65%増だった(6月末時点)。

 同社で特に好調なのはワインセット(赤ワイン6本4725円など)で、今年の中元期もすでに1300セット以上を販売した。ほか、辛子明太子(3675円)やマロングラッセ(3150円)が売れ筋だという。

 こうした自宅向けお中元が好調な背景には、他人への儀礼的な贈答は手控える一方で、自分で美味しいものを食べたいという“プチグルメ”、“プチ贅沢志向”の高まりがあるようだ。

 お中元期は、百貨店にとっての書き入れどき。高島屋では、シーズンの6月には、食品の売上高に占めるお中元のシェアは4割強にも上る。商品開拓に力が入るのは当然で、普段店頭には並ばない地方の名産品などが数多く集まる絶好の機会だ。百貨店側の販促と相まって「お中元のついでに、自宅向けに注文していくケースが増えている」(京王百貨店)という。

 とはいえ、お中元全体の規模からすれば、自宅向けのシェアは数%にすぎない。お中元市場の縮小傾向に歯止めをかけるまでには至らないようだ。

(週刊ダイヤモンド編集部 須賀彩子)