[ポイント1]
「目的・ゴール」をはっきりさせる

 トヨタが新しい取り組みで目指しているのは、ただ効率が上がればいい、というものではありません。同時に「八百屋の親父」になってほしい。つまりは、この仕事をやったら、毎日活き活きと楽しい、という仕事です。そのために必要なこと、その一つが仕事の「目的・ゴール」をはっきりさせることです。

 イギリスの工場で、工員のモチベーションを大きく高めた取り組みがありました。それこそが、「目的・ゴール」をはっきりさせることでした。

 例えば、ネジを締める。ただネジを締める仕事を延々とやり続けるのか。それとも、このネジを締めることによって、この部品とこの部品がちゃんと結合されて車の耐久寿命が長くなる、だからとても大事なネジなのだ、ということがわかってネジを締めるのか。さて、どちらが、ネジを締める仕事に意欲を持てるでしょうか。

 それこそ家に帰って、子どもに聞かれたとする。
「お父さんは、どんな仕事をしているの?」

 このときに、
「ネジを締めるんだよ。車一台につき一〇本を締める。今日は二〇〇台、工場で作ったから、二〇〇〇本のネジを締めてきた」
と語るのか、
「車のブレーキに部品を取り付けるネジを締めているんだ。決められた力でしっかり締めると、お父さんが作った車のブレーキは、何十年も壊れないで済むんだよ」
と語れるのか。イギリスでは、この取り組みが大きな効果をもたらしました。

 ホワイトカラーの仕事なら、わかりやすいのは、資料を作る仕事でしょう。では、その資料はいったい何のために作られるのか。何が「目的・ゴール」なのか。それをわかって資料を作るのと、わからずに資料を作るのとでは、結果は違ってくる。これは、ご想像いただけると思います。

 ところが、多くのケースで、これができていない。はたして上司は、きちんと「目的・ゴール」を部下に伝えているでしょうか。部下は「目的・ゴール」を理解して、仕事をしているでしょうか。

 そして「目的・ゴール」を認識していると、「部分最適」を避けることができるようになります。仕事の目的は、お客さまにご満足いただくこと。部門が満足することではけっしてない、ということがわかるからです。

 特に大きな会社では、この大前提がともすれば忘れられてしまうことがある。部門の都合で、行動してしまうことがある。「タコツボ」状態で、周りが見えなくなることが起こりうる。

 だから、「目的・ゴール」をきちんと設定し、常に意識しておくことが重要になるのです。

 それこそ、「目的・ゴール」のない仕事はしてはいけない。それは何ももたらさない可能性が高いからです。そんな仕事では、やっている人はモチベーションが高まるはずはありません。そして、「目的・ゴール」のない無駄な仕事を排除することで、生産性は大きく高まるのです。

 続くポイント2は、3月24日に公開予定です。