トヨタの自工程完結は、工場だけでなく、オフィスでも仕事の進め方の基本になるものです。工場でもないのに、なぜ「工程」なのでしょうか。営業や企画といった仕事でも成果が出るのはなぜでしょうか。トヨタの現役幹部による最新刊『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』から、ポイントを紹介します。
営業や企画の仕事にも、
本当は「工程」がある
トヨタが進めている新しい取り組みを端的に表現するなら、仕事の質を高め、失敗をなくす仕事の進め方です。生産性とモチベーションを同時に高められる仕事の進め方、と言い換えてもいいかもしれません。
トヨタでは、リーダーになる人、リーダーを目指す人には、全員に持っておいてほしいと考えています。もとよりトヨタは、全員にリーダーになってほしいと考えている会社。冒頭で紹介したように、それが会社としての大きな力を生み出すからです。
もちろん誰でも仕事をする人は、仕事の質を高めたい、生産性を高めたい、部下や仲間のモチベーションを高めたい、といった意識を持っているのではないかと思います。
ところが、それができているのかといえば、必ずしもそうではない。何度も書いていますが、「心がけ」だけあってもうまくはいかないのです。意識さえしていればうまくいくのであれば、誰も苦労はしません。そうでないから、みんなが困っている。
では、どこに問題があるのかというと、仕事の進め方そのものなのです。「このとおりにやれば、必ずうまくいく」という「やり方」が、確立されていないからこそ、そういうことが起こるのです。
誰でも、結果が出ない仕事や、ミスをすることを目指して仕事をしているわけではありません。なのにそうなってしまったら、一生懸命頑張っているのにどうして結果が出せないのか、ということになるのは当然です。
いや、それは工場のような必ず決まった仕事だから、できる考え方ではないか、と思われるかもしれませんが、私は違うと思っています。すべての仕事に、必ずうまくいく仕事の進め方=「工程」はあるのです。それを、しっかり洗い出しているか、そうでなくて、ぼんやりとした中で仕事をしているかの違いだと思うのです。
では、ホワイトカラーの仕事の「工程」とは何か。それは、「意思決定」でしょう。資料作りであれ、企画であれ、営業であれ、何かのアウトプットを出していく途中には、いくつもの「意思決定」が存在しています。「意思決定」が積み重なって、最終的なアウトプットは出てきているはずなのです。
例えば、会議で使用する資料を作る。スライドにするのか、ペーパーにするのか。どんなソフトウエアを使って作るのか。どんなデザインを選ぶのか。どんな書体にするのか。何枚にするのか。データはどこから持ってくるのか。
表にするのか、グラフにするのか。いくつ入れるのか……。すべては、資料を作る人の「意思決定」で進んでいくのです。
この「意思決定」の一つひとつこそ、現場で言うところの「工程」です。この「工程」=「意思決定」を正しくないやり方でしてしまえば、結果を間違ってしまうことになります。
では、正しい「意思決定」をするためには何が必要なのか。最終的に正しいアウトプットを出すためには、何が必要になるのか。これから6回にわたってホワイトカラーの仕事における「自工程完結」のポイントを紹介しましょう。