今すぐ、「今いるメンバー」の社員教育を

 社員が辞める。募集をかけても人が集まらない。すると、どうなるか?
 まず、会社の業績が下がります。
 残った人たちの負担が増えて、組織が疲弊します。そして社内がギスギスしてきてまた社員が辞めていきます。この負のスパイラルの行き着く先は、倒産です。

 人の採用がままならない以上、「今よりも優秀な人材がほしい」という考えは改めたほうがいい。「今いるメンバー」が最善だと考え、「今いるメンバー」の社員教育をして人材の定着を図るべきです。

「トラック運送業界のように、労働集約型の産業(人間の労働力に依存する産業)はどこも人手不足で、それでいて生産性を上げる必要があります。
運送業は、どこもやることは同じですから、社員教育をして、『人』で差別化を図るしかありません。

 私が社員を武蔵野さんの実践幹部塾で学ばせているのも、学べば学ぶほど、社員の顔つきが変わってくるのがわかるからです。社員教育をしているのと、していないのとでは、全然違うと思います」(池畑社長)

 私はかつて、やる気のない社員を解雇することも考えました。
 しかし、その直前で「待てよ」と思い直した。

 しょせん武蔵野は、ちっちゃな中小企業です。社長の私が落ちこぼれである以上、社員を入れ替えたところで状況は改善されないに違いない。だとすれば、今いる社員を鍛える。この6年間、70人の課長職以上で辞めた人はゼロです。

 やる気のない社員を解雇したところで、代わりに優秀な人材が入社してくれるとは限りません。ならば、今いる人材を鍛え直すのが最善策です。

<著者プロフィール>
小山 昇
(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。
2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。
『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】
http://www.m-keiei.jp/